トーク番組のプライムタイム編成が挫折


 米NBCネットワークが昨年9月から始まった新シーズンにスタートさせた画期的なプライムタイム編成が早くも挫折することになった。この画期的な編成とは、同ネットワークで長年の間、看板番組となっている深夜のトーク番組「ザ・トゥナイト・ショー」のフォーマットを、司会者のジェイ・レノ氏ともども、そっくりプライムタイムの10時台に60分の帯番組として組込んだ「ザ・ジェイ・レノ・ショー」(以下レノ・ショー)のこと。ネットワークを挙げての番組宣伝を経て昨年9月14日に始まった。


同編成の狙いは、高騰を続けるプライムタイム番組制作費の大幅な削減だったが、視聴率が低迷し、系列局の造反の動きが表面化したことからネットワークが継続をあきらめた。 レノ・ショーは、2月中旬からもとの深夜帯(午後11:35時)に戻す予定だ。


同番組の制作コストは、1本(60分)約40万㌦ですむと言われ、制作費が300~400万㌦かかる通常のプライムタイム番組(同1時間)に比べ格安。プライムタイム(午後8~11時)の一角の制作費を徹底的に節約し、人気低迷が続くNBCネットワークの蘇生計画と合理化策に充てるはずだった。


ところが、デビュー当時は元気だった視聴率が、その後は低下の一途。ローカル局運営に大きな影響を与え始めていた。全米最大のテレビ市場ニューヨークのネットワーク直営局WNBCテレビでは、広告主が重要視する視聴者層(18~49歳)の09年11月における同枠の平均視聴率が1.1%を記録。ドラマを放送していた前年同月の平均視聴率2.5%から大幅に落ち込むほど。


プライムタイムが終わった直後は各局ともドル箱的存在となっているローカルニュース番組を編成しているが、レノ・ショーのおかげで、多くの視聴者が他局へ流れていってしまったようだ。視聴者数30%を失った局も多く、カリフォルニア州パサデナで開かれた会議では、系列局の間でレノ・ショーをボイコットする動きも出たようだ。低視聴率にもかかわらず、制作費が極めて廉価なことから、同番組はネットワークに利益をもたらしている模様だが、系列局の突き上げにネットワーク・サイドが堪えられなくなった格好だ。

 NBCは、2月12日から深夜帯の編成を仕切りなおしすることになるが、ジェイ・レノ氏、さらには世代交代を狙って「ザ・トゥナイト・ショー」の後継司会者に抜擢したコナン・オブライエン氏を説得できるかどうか微妙な情勢。「広告主、視聴者、系列局を無視した大胆な発想」(アドバタイジング・エイジ誌)はシーズン半ばで失敗に終わったばかりか、ネットワーク内に大混乱を引き起こすことになりそうだ。