フールーの存続に黄色信号


 テレビ番組などが全編視聴できる動画人気サイト「Hulu(フールー)」の行方に 暗雲が立ち込めている。フールーの経営方針をめぐってオーナー会社とフールーの経営責任者、さらにはオーナー会社間で不協和音が生じているためだ。番組配 信は広告収入で運営し、無料配信モデルをつらぬくべきだと主張する同サイトの最高経営責任者(CEO)ジェイソン・カイラー氏と、課金制度を導入し、さら なる収益を図りたいオーナー会社との間で長期にわたり軋轢が生じていたことは周知の事実。昨年夏には双方が妥協するかたちで、サービスの一部を有料にする 「Hulu Plus(フールー・プラス」を立ち上げている。


しかし、ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、放送直後の番組が引き続き無料で視聴できるサービスが残っていることや、売上高の伸びにオーナー会社 が業を煮やしているという。ネット上の番組無料配信が放送事業に悪影響を与え始めているとする考え方も強まっているそうだ。人気急上昇中のオンライン・レ ンタルビデオ会社「Netflix(ネットフリックス)」やアップル社の番組配信サイトへの振り替えを念頭にフールーからの番組撤退の動きも表面化してい るという。こんな報道ぶりに、フールーの終焉を予感する落胆の声が上がっている。


そんな中、フールー経営陣からは、加入者に生番組の配信や番組のオンデマンド・サービスを提供するケーブルテレビ(CATV)型サービスへの移行案も浮上している模様だ。
08年にサービスを開始したフールーは、ネットワークテレビのプライムタイム番組を翌日に無料配信したことから、“追っかけ視聴”に最適などと若者を中心 に瞬く間に人気サイトに成長。ネットワークテレビは、人気動画サイト「YouTube(ユーチューブ)」やネット上の違法番組掲載への有効な対抗措置とし ても位置づけていた。


フールーの昨年12月のユニーク・ビジター数は約2700万件、番組などの閲覧数は1億3000万軒以上を記録している。ただ、同サイトの2010年売上 高は2億6000㌦に留まった。ちなみに、ネットフリックスの同年売上高は21億6000万㌦を記録した。フールーは、ニューズ・コーポレーション、 NBCユニバーサル、ウォルト・ディズニーといった米メディア複合企業大手3社などが主なオーナー会社に名を連ねている。