ムンバイ事件で露呈した脆弱な海外取材力


インドのムンバイで起きた同時テロに対する米メディアの報道ぶりに辛口な意見が出ている。業界誌ブロードキャスティング&ケーブルは最新号の中で米テレビ各社による報道に焦点を当て、信頼できる情報が欠落していたと批判している。そして、落第点がついた報道ぶりの背景に、海外支局の閉鎖やスタッフの削減など各社が進めてきたリストラ策を挙げている。
同誌は、テロが収拾するまでの3日間、米テレビ報道は、テロ攻撃を受けた場所、テロリストの数、死者や負傷者数かなど、事件にかかわる基本的な情報が錯綜したままだったとしている。インド政府の情報提供が遅れたり、誤報があったことは認めつつも、決定的に不足していたのは記者による独自取材だったのではないか、と論評している。

さらに、「事件が僻地で起きたわけではなく、21世紀の世界経済を担うとも言われるムンバイであったこと。新しいテクノロジーが普及しているにもかかわらず、現場からの中継が目立ったのはせいぜいCNNぐらいだった」などと指摘している。同誌によれば、中継体制が不十分だったため、ほとんどのテレビ局が新鮮な映像をお茶の間に届けるまでに半日以上かかったとしている。ちなみに、CNNは、たまたま別の取材でムンバイに取材クルーが居合わせたことで、他社に先行できた模様。

米テレビ各社は広告収入減による業績不振のため、様々な規模のリストラを決行しているが、海外取材体制がターゲットになっているのが現状。ただ同誌は、「事件が起きたのが米市民にとって最も大切な休暇の一つであるサンクスギビング(感謝祭)の最中で、特別編成態勢にあったテレビテレビ各社にとってタイミングが悪かったかもしれない」と、ちょぴり同情も寄せている。