ワシントン紙が異例の業務提携


インターネットの本格的な普及のおかげで米国の新聞業界が存続の危機を迎えている。米国を代表する有力紙ニューヨーク・タイムズの購読数は下降線を辿る一方で大苦戦、米国社会に衝撃を与えているが、昨年暮れには名門ローカル紙発行を主要事業にしているメディア大手トリビューンが経営破たん、会社更生手続きを始めた。そして、新年も引き続き厳しい年になることは避けられない情勢で、新聞社側は様々な対応策を打ち出してきた。

首都ワシントンの有力紙「ワシントン・ポスト」と同近郊の「ボルチモア・サン」が、業界の常識を破る業務提携を発表、さっそく1月1日から実施している。経営難を受けての苦肉の策だが、記事や写真の共用を通して経費の徹底的な削減を目指す。具体的には、ワシントンに隣接するメリーランド州の州都ボルチモアとその東部周辺の取材は「ボルチモア・サン」が担当し、その他のメリーランド州とワシントンのローカルニュースは「ワシントン・ボスト」が受け持ち、記事を共用するというものだ。スクープ記事は共用しない予定。

ワシントン・ポスト紙の編集主幹を務めるマーカス・ブロチリ氏は発表にあたり、「ボルチモア・サンには長年にわたり敬意を払ってきた。同紙のボルチモア地区における強力な取材力を背景にした記事をワシントン・ポスト紙に掲載することで、読者が大きな恩恵を蒙ることになる」と述べている。非営利団体でメディア事業の調査などにあたる「ポインター研究所」のアナリスト、リック・エドモンド氏は、「1年前の米新聞業界ではまったく考えられなかったことだ」と、驚きを隠せない様子。エドモンド氏は、「同業界を取り巻く厳しい環境を考えれば、今回のような業務提携が雪だるま式に増える可能性がある」と付け加えている。

ところで、業界誌「メディアウィーク」の最新調査によれば、昨年11月における全米の有力紙のホームページへのアクセス数が軒並み急増ぶりを示す皮肉な結果となっている。各紙のヒット数は、ロサンゼルス・タイムズ紙が前年同月比143%増、ウォールストリート・ジャーナル紙32%、ワシントン・ポスト紙が17%増、ニューヨーク・タイムズ紙10%増など。