人気動画配信サイトが有料サービス導入


米若者の間で圧倒的な人気を誇る動画配信サイト「Hulu(フールー)」が6月29日、有料サービスの導入に踏み切った。本格的な収益を上げるよう求める親会社の圧力に屈した格好だ。有料サービスは「Hulu Plus(フールー・プラス)」と呼ばれ、加入料は、月額9.99㌦(約900円)に設定された。当面、限定されたユーザーを対象に試験的に導入される。


フールーの最高経営責任者ジェイソン・キラー氏は、ブログを通して、「無料版フールーがなくなるわけではない」と強調、同サイトが完全に有料化されるとの懸念を払拭しようとしている。フールーによれば、これまで通りネットワーク番組の最新エピソードなどは無料で視聴できるが、視聴できる本数は1~5本に限定される。一方、フールー・プラスに加入すれば、各ネットワークテレビが提供するヒット番組45シリーズすべてのエピソードにアクセスできるほか、過去に放送された番組なども含め、視聴できる番組数が大幅に増えるという。


さらに、フールー・プラスは、アップル社の新携帯端末「iPad(アイパッド)」(写真)やアイフォン4、インターネット接続機能が内蔵された韓国サムスン社のテレビやブルーレイ・ディスク・レコーダーなどでもアクセスが可能となる。「いつでも、どこでも、より多くのプラットフォームからフールーが楽しめる」(フールー社)ことになるという。今年中には、ソニー・プレーステーション3やマイクロソフトXbox360などのゲーム機からもアクセス可能になる予定だ。


フールーは、2008年にサービスを開始した新興サイト。現在、米メディア企業大手、NBCユニバーサル、ニューズ・コーポレーション、ウォルトディズニーなどの共同出資で運営されている。ネットワークテレビの番組が翌日には無料で視聴できることなどから、全米キャンパスの寮に住む学生などを中心に人気沸騰。今やユーチューブに次ぐ動画配信サイトに成長している。

業界内には有料化は利用者離れを招くとの懸念も示されているが、「最低50㌦は課せられるケーブルテレビ(CATV)サービスを解約し、約10㌦ですむフールー・プラスに乗り換えてもいいと考える消費者もいるのではないか」(前CBSインタラクティブCEO、クウィンシー・スミス氏)などと好意的な声も寄せられている。一方、フールーの普及は事業の存続にもかかわると危機感を募らせていたやCATVや衛星放送事業者は、フールー有料化の行方を注視している。