北京五輪の競技時間をめぐり各国が物議


約1年後に開催が迫った北京五輪のイベント・スケジュールをめぐるIOC(国際オリンピック委員会)の決定に欧州諸国などから不満が爆発している。男子競泳400メートル個人メドレーなどの種目が現地時間の午前10時頃に開催されるなど、人気競技種目がこれまでの五輪では考えられない時間に設定されるからだ。

ところが、北京時間の午前10時は、ロサンゼルスでは19時、デンバーは20時、シカゴ21時、ニューヨーク22時と、米国の主なテレビ市場のほとんどでプライムタイム(20:00-23:00)内に収まる時間。米国内の独占放送権を握るNBCにとって格好な放送時間となっている。 一方、この時間は、競泳人気が高いオーストラリアでは正午、ロンドンではなんと午前3時、モスクワでは午前6時と、テレビ視聴にとって極めて不利な時間になってしまう。

米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、欧州の放送事業者からは、「IOCが契約違反をした疑いがある」などと痛烈な批判が出ているほか、オーストラリアのテレビ局幹部からは、「米NBCの利益のみを念頭においた、IOC史上最悪の決定だ」と不評を買っている。 こうしたIOCによるNBCへの「計らい」のうらには同ネットワークが払っている高額な放送権料がある。

NBCがIOCに支払った北京五輪独占放送権は8億9,400万㌦(約104億円)(ウォールストリート・ジャーナル紙)。例えばオーストラリアが払った権料6,400万㌦(約7億7,000万円)の約14倍にも相当する。 NBCスポーツ担当のディック・エバソル会長は、この高額放送権料を盾に、IOCに対し辛抱強いロビー活動を展開、北京大会では人気種目の多くが米国のプライムタイムに合わせた形で開催されることになった。

今や競技の結果がインターネットでいち早く入手できる時代。エバソル氏は、NBCが視聴率を確保するためには、生中継が重要だとの考えを主張したもようだ。北京五輪中継では、NBCのプライムタイムの60%が生中継になるという。