報道ビジネス、IT企業主導の時代に


各報道媒体広告売上高

2010年)

媒体

前年比

ローカルテレビ局

17

インターネット

13.9

ケーブル局

8.4

ネットワークテレビ

6.6

ラジオ

6.0

雑誌

1.4

新聞

-6.4

資料:Pew Research Center

米調査会社「ピュー・リサーチ・センター」はこのほど、2010年における米報道ビジネスの状況をまとめた報告書「The State of the News Media 」を発表した。それによると、10年における各報道機関の広告売上げは、新聞業界を除けば、そろって回復基調に転じた。媒体別で見ると、ローカルテレビ(報道番組)の売上が前年比17%増(約185億㌦)とトップ。これにインターネット(ニュースサイト)の13.9%増(約258億㌦)、ニュース専門局(FNCCNNMSNBC3)8.4%増(約14億㌦)、ネットワークテレビ(報道番組)6.6%増(181億㌦)、などとなった。唯一新聞だけが前年比6.4%(約258億㌦)の減収を記録した。

 

また、同報告書によれば、ニュースに関心のある人が増え続けていることがわかった。しかし、入手先としてインターネットを選ぶ人が前年比17.1%と急増しており、テレビや新聞など既存メディアを利用する人の数は減少している。テレビの中では、ケーブル局人気が急下降したのが特徴だ。速報をネットで入手する人が増えたことなどもあって、視聴者数は前年比13.7%減少。特にプライムタイムの視聴者数が16%減少した。一番の打撃を受けたのがCNNで視聴者数は37%減少。人気のFoxニュース・チャンネルは11%減、MSNBC5%減だった。これに対し視聴者数減を最小に食い止めたのがローカル局のニュース番組で同1.5%減。これにネットワークテレビ・ニュースが3.4%減と続いた。

 

同報告書は、米消費者がニュースを入手する手段として、携帯電話や情報端末に依存する傾向がますます高まっていることを指摘。「消費者がどんなニュースを欲しているのか」を嗅ぎ分け「それらの視聴者をいかに確保するか」という点については、もはや報道機関ではなくアップル社などのモバイル端末メーカーとグーグルなどソフト・メーカーが主導的立場にあると言える、と指摘している。そのため、各報道機関はこれらIT企業と収益を分かち合うことになるばかりか、報道ビジネスの行方を占う鍵すらIT企業が握る可能性があると強調している。 <テレビ朝日アメリカ 北清>