完全デジタル化延期か ハワイは一足先に完了


米国地上波テレビ放送は、アナログからデジタルへの完全移行が2月17日に予定されている。しかし、1ヶ月を切った今、期限の先送り案が急浮上してきた。地デジ放送を受信できるチューナー購入を補助する政府プログラムの予算が枯渇し、機能しなくなったことなどを受け、オバマ新政権が議会に延期を呼び掛けている(先週号既報)。これに対し、野党共和党が反対の立場をとっているほか、「これ以上のサイマル放送は局の運営費を圧迫し経営にも少なからぬ影響を及ぼしかねない」などと、ローカル局からはさらなる延長に反対の声が上がっている。ただ、議会は民主党が多数派を占めており、「期限延期は事実上きまったようなもの」(業界筋)という声も聞かれる。上下両院の民主党指導部は新期限を6月12日とする修正案を今月中に通過させたいとしている。

ところで、ハワイ州で15日正午、全米に先駆けてデジタルへの完全移行が終了した。昨年9月ノースカロライナ州のウィルミントン地区でアナログ停波が完了したが、州全体でアナログ放送が停止されたのはハワイが初めて。地元紙スター・ブレティンは、全米はもとより、2011年に完全デジタル化が予定されている日本にとっても「教育の場」になったと論評している。

当日は、大したトラブルもなく、デジタル放送への移行が完了したが、問題がなかったわけではなかった。ハワイ第2の都市、ヒロ(ハワイ島)にある、ABC系列局KITVテレビで直前に真新しいデジタル送出機が故障し、45分間にわたって放送できなくなるハプニングがあったほか、ホノルルのワイキキビーチ区域で特定のテレビ局の番組が見られなくなったようだ。同地域をカバーするNBC系列局KHNL-TVの送信塔が低い場所にあるため、デジタル波が届かなかったことが原因だ。KHNL-TV関係者は、「今春までに送信塔を高地に移す予定。そうすれば問題は解決されるだろう」と述べている。ハワイ放送事業者協会(HAB)のクリス・レオナード会長によれば、当日設置された2か所のコールセンターに、午前中に約200件、スイッチ後の午後帯に約300件の問い合わがあった。問い合わせの多くがデジタル・チューナーの接続方法などに関するものだった。