容疑者の映像放送に猛抗議


米バージニア工科大学で4月16日に起きた銃乱射事件の犯人とされるチョ・スンヒ容疑者が送ったとみられる映像の一部などを米テレビなどが放送した件で、視聴者などからの電話抗議がメディア各社に殺到、関連映像が画面から消える事態になった。事件発生直後の18日に小包を受け取り、内容の一部を真っ先に独占放送したNBCを始め、数時間後に同局の配信を受けて放送した他社が4月20日、そろって関連映像の使用を自粛する決定をしたからだ。

NBCに届いた小包の中には、チョ容疑者が銃を持った両手を掲げた写真や同容疑者のビデオ・メッセージが収められたDVDなどが入っていた。NBC側は、「中身を慎重に検討し、ごく一部を放送した」(同広報)と弁明したが、視聴者からは、「これらの映像を(視聴率獲得のために)不当に利用した。模倣犯罪を引き起こす行為にも当たる」などとする怒りの声が多数寄せられたという。

NBCはこれらの抗議を受けて、素材使用の自粛を決定。CNNテレビも20日になって、チョ容疑者のメッセージが収められた映像と銃をかざした写真使用を禁止する社内通達をした。CNNは当初、同映像を使用した理由について、「これほどの重大事件を引き起こした容疑者の意識構造を知る上で、放送は適切と考えた」と説明していた。

同映像放送の是非については専門家の間でも、「内容がきわどいものであっても、事件の全容解明に役立つことは過去の例で証明済み。NBCなどの判断は正しかった」(ハワード大学ジャーナリズム学科ジェイムズ・ラダ教授)などとする支持派から、「映像を見たからと言って容疑者の真の姿を垣間見ることは出来ない。被害妄想に陥っている容疑者のメッセージを、特に若者などに見せることは賛成できない」(ABCニュース・コンサルタント)などと意見が分かれているが、今回は反対派の声がメディアを動かしたかたちだ。