広告市場の回復時期に異論


世界最大規模の広告会社が、「広告市場が回復基調にある」などとする市場の見方に慎重な構えを示している。オグルヴィやヤング・アンド・ルビカム、さらにはJWトンプソンなどの大手広告代理店を傘下に置き、世界最大の売上高を誇る(ウォールストリート・ジャーナル紙)WPPグループ(本部:ロンドン)の最高経営責任者(CEO)マーチン・ソレル氏は、「消費者や企業の間の信頼感指数が、パニック・レベルにあった2008年第4四半期や2009年第1四半期に比べ格段に改善されていることは疑いの余地がない。しかし、回復宣言をするには時期尚早だ」と楽観論を戒めている。


フランスに本部を置く広告代理店グループ、パブリシス・グループのCEO、マーチン・レビー氏が先に発表した、「広告市場はすでに緩やかな回復を始めている」とした見方に異議を唱えるもの。レビー氏の予報は、広告業界トップが出した初の楽観論として業界の注目を集めていた。


ソレル氏によれば、「為替レートや企業買収の経済効果などを差し引きすれば、2009年第3四半期の広告売上高は、第2四半期の10.5%に比べ改善されてはいるものの、前年同期比8.7%減少しており、回復とは呼べない状況」。ソレル氏は、「前年比並みに回復し始めるのは2010年に入ってからのこと」と予測している。


しかし、ソレル氏の警告にもかかわらず、市場はレビー氏の見方を好感。皮肉にもWPPグループの株価は4.6%上昇した。パブリシス傘下の広告代理手大手「ZenithOptimedia」によれば、2010年の世界広告市場は0.5%の成長に転じるという。


ところで、景気後退による広告不況は、世界中の広告会社にも大きな悪影響を及ぼしている。WPPグループでは、今年9月、全従業員の10%の人員カットを決行したばかり。リストラ後の従業員数は101,333人となっている。