NFL、新労使協定交渉決裂で米TV界に危機


米国で人気ナンバーワンのスポーツといえばアメリカン・フットボール。今年2月に開催された米プロ・フットボール協会(NFL)王座決定戦スーパーボウルが平均視聴者数11100万人を獲得、米テレビ新記録を塗り替えたことはまだ記憶に新しい。そのNFLに所属するチームのオーナーと選手間の新労使協定をめぐる話し合いが3月中旬物別れに終わり、ファンはもとより、米TV界がその行方を固唾を呑んで見守っている。仮に、9月からの新シーズンが開催できないとなれば、NFLの放映権を保有するテレビネットワーク各社は、高視聴率番組を失うばかりか高額なCM収入を失うことになるからだ。

 

NFL主催のゲームの独占中継権を保有するのは、地上波Foxネットワーク、NBCネットワーク、CBSネットワークのほか、ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門局ESPN、さらには衛星放送事業者最大手ディレクTVなど6社。米金融大手ウェルズ・ファーゴによれば、これら6社がNFL番組から得るCM売上高は年間30億㌦にも達する。

 

影響は収入のみに留まらない。プライムタイム番組が不振で、ここ数年連続最下位の視聴率に甘んじているNBCTVシーズン前半に放送するサンデー・ナイト・フットボールは同期のドル箱番組。視聴率も他番組を寄せ付けない強さだ。NFLシーズンが開催されないとなれば、NBCばかりでなく、全社の番組編成に多大な影響を与えることは必至だ。広告会社大手オムニコム・グループのスポーツ部門担当者は、「NFL番組は高視聴率を稼いでくれるばかりか、視聴者が(収録せず)リアルタイムで視聴してくれる代表的な番組。広告主にとってスポンサーしたい番組の筆頭だ。代わりの番組を探すのは事実上不可能なのが現状だ」と語っている。

 

新労使協定については、年間90億㌦以上ともいわれる収入のオーナー側と選手側との配分比率の変更や、シーズン中の試合数を現行の16試合から2試合増やすことなどについて対立。一部選手がオーナー側を独占禁止法違反などで連邦地裁に提訴。46日から同地裁で審理が始まる。<NY北清>