新聞社にウェブ対応強化を呼びかけ


インターネット大手グーグルの最高経営責任者(CEO)、エリック・シュミット氏がこのほど、カリフォルニア州サンディエゴで開かれた米新聞協会(NAA)の年次総会で演説し、新聞の重要性と同業界が直面する課題などについて自らの考えを披露した。不況と生活者の新聞離れで、未曾有の業績悪化に見舞われている同業界では「インターネット企業がただ乗りしている」という意見が支配的。いわば敵陣に乗り込んだシュミット氏の発言を米有力紙などが一斉に取り上げ、大きな関心が寄せられた。


シュミット氏は、各紙が展開する電子版などインターネット対策に一定の評価を示しながらも、「読者の視点に立つ」という観点から、一般向けではなく、個人別にターゲットを絞ったサイトの創設など、現ビジネスモデルからの脱却の重要性を強調した。また、「我々は、皆さん(新聞業界)とともに、新たなビジネスを構築することが出来ると考えている」などと述べ、両者の関係改善を呼びかけた。

また、現在、新聞業界の間で、無料提供されているウェブサイトの有料化が検討されていることに関しては、「より多くの読者に到達するためには広告型を継続すべきだ。インターネット上で情報を制約することはもはや困難な状況だ」と述べ、インターネット広告の強化を優先すべきだとの考えを強調した。ただ、同氏は、米アップル社が運営する音楽・動画配信サービス「アイチューンズ・ストア」の成功を例に取り、新聞社が特定のコンテンツ(記事)に個別に課金するような方法が技術的に可能になっていることを指摘、新たなビジネスモデルになり得る可能性を示唆した。

米国ではAP通信が、契約なしで記事を掲載しているインターネット企業に対し、法的措置も辞さない方針を明らかにしたばかり。不況による広告収入の落ち込みと、インターネットの普及で販売部数の減少に見舞われている新聞業界などがネット業界に対し反撃に出る動きを見せている。