歌唱力かアイドル性か アメリカンアイドルで物議


今や米テレビ界で人気ナンバーワンの座を不動のものにしたFoxネットワークのオーディション番組「アメリカン・アイドル」。シリーズは終盤に入ったが、決勝出場者中の一人をめぐって番組がゆれている。話題になっているのはサンジャ・マラカさん(17歳)。「歌がへたで、ダンスも出来ないマラカさんは失格となるべきだ」と切り捨てる審査員と、彼はアイドル性を備えており、十分資格ありだとする視聴者の間で熱い綱引きが繰り広げられている。そしてとうとう米国を代表する有力紙「ニューヨークタイムズ」が論評を加える事態となった。

アメリカン・アイドルの過去の優勝者は皆レコード会社と契約するなど、いずれも歌唱力抜群の実力者ばかり。未経験ながら「ドリーム・ガールズ」の俳優として抜擢され、抜群な歌唱力を発揮したこともあり見事助演女優賞を獲得したジェニファ・ハドソンさんはアメリカン・アイドルの準優勝者だったことは周知の事実。番組の人気を支える審査員の一人、サイモン・コーウェルさんは、「いくら人気があっても、歌が歌えないマラカさんがこれ以上決勝ラウンドへ進むことは番組の趣旨に反する。もし、視聴者が彼を選び続けるならば、審査員を辞職する」と言い出す始末。

ところが、マラカさん人気が衰える兆しはない。ベスト10に残った翌週も勝ち残り、4月第1週の時点でベスト8入りしている。毎回奇抜なヘアースタイルを工夫するなどチャレンジ精神旺盛なマラカさんは人気動画共用サイト「ユーチューブ」の常連になったほか、ブログ・サイトの間でもマラカさんを支持する運動が広まっている。ニューヨークタイムズ紙は、2000年の米大統領選挙で、総得票数ではブッシュ大統領を上回ったものの、選挙制度によって当選を阻まれたゴア元副大統領を引き合いに出し、「あの時、無力感に打ちひしがれた市民が体制に向かい立ち上がっているのでは」と分析している。