生体反応でCM視聴調査


米NBCネットワークがHDD内蔵型のレコーダー(DVR:デジタル・ビデオ・レコーダー)の普及で懸念されるCM飛ばし視聴対策を念頭に新たな調査に乗り出した。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、NBCの関心はCM早送り中の視聴者の反応。NBCの依頼を受けた米調査会社「イナースコープ・リサーチ(Innerscope Research)」では、視聴者の体に測定器を接続、CMを早送り視聴してもらいながら、心拍数の変化、手のひらの発汗状況、さらには眼球運動の様子を観察し、データを蓄積始めた。

調査はまだ初期段階だが、視聴者はCMを飛ばし中の際にも一定の注意を払っていることを示す生体反応が測定された模様で、NBCが期待した通りの結果が出ているという。NBCネットワークを傘下に置くNBCユニバーサルのリサーチ部門担当のアラン・ワーツェル社長は、「これまでCMは早送りされてしまえばまったく価値のないもの、という捉え方が一般的だったが、今回の調査で飛ばし視聴されてもCMの価値は失われないということが判明した」と述べている。

しかし、広告主側が必ずしも同様な捉え方をするとは限らない。大手広告代理店WPPグループ傘下の「マインドシェア・ノースアメリカ」でネットワークを担当するジェイソン・モルビー社長は、「早送りされるCMに料金を払うなんて考えられない。CMは15秒あるいは30秒視聴してもらってメッセージが伝わるように企画・制作されているものだ。音声も聞かずにたった1.5秒ぐらいに飛ばされるCMなどは価値がない」と断言している。

これに対し、米広告調査財団(ARF)の主席リサーチャー、ジョー・プラマー氏は、次のように語り、NBCの調査が有益なデータをもたらす可能性を含んでいることを示唆している。「CMを見たかどうかは実は大切なことではない。CMが見られたからといって即、購買に弾みがつくとは限らないからだ。大事なことはCMに含まれたブランドや商品名などに視聴者がどのような反応をし、そして記憶してくれるかだ」。