番組のネット配信は敵か見方か

米国で人気急上昇中のテレビ番組のインターネットやモバイル配信の是非をめぐって米メディア界で賛否両論が噴出している。放送事業者の多くが、「ネット上の番組配信は新たな視聴者を開拓しているばかりか、これらの視聴者を放送にも引き付けている」と主張している。しかし、反対意見も少なくない。米ビジネス・コンサルティング会社「IBM Global Business Services」が来年初頭に発表予定の調査結果によれば、特にネット配信でテレビ番組を視聴するようになった生活者の間で、顕著なテレビ離れが起きているという。

同調査を担当したビル・セラオ氏によれば、調査の対象になった人の76%がテレビ番組などをパソコン上で視聴していると答え、昨年の60%と比べ急増していることが分かった。そして、それらの半数が「オンライン視聴をするようになって、テレビを見る機会が減った」と答えた。また経営コンサルティング会社大手「アクセンチュア」の調べでは、18~35才代の生活者の多くが従来型のテレビ視聴に不満足感を示しており、これらの生活者のテレビ視聴習慣に大きな変化が起きている。同社によれば同世代の60%が、「テレビ番組や動画をテレビではなく、パソコン上や携帯電話で見たい」と答えている。

これに対し、米メディア大手CBSコーポレーションのマーケット・リサーチ部門責任者ディビッド・ポルタック氏は、「今年の北京五輪を見れば分かるように、番組をマルチ・プラットフォーム配信することで、放送上の番組視聴率が上がることが証明されている」と反論。番組のネット配信の是非については、今後も様々な分析や見方が出てきそうだ。米ネットワーク・テレビ各社はプライムタイム番組のほとんどを、放送翌日にはインターネット配信しているのが現状。