米ABC、海外支局はワンマン体制で


米ABCネットワークの報道部門である「ABCニュース」は、過去20年に渡り経費削減の一環として海外支局の削減を強いられてきた。しかし、今、挽回策の一環として一人支局の拡張を始めている。IT技術を活用し、記者がディレクターやカメラマン役も勤める“ミニ支局”はすでに、ソウル、リオデジャネイロ、ドバイ、ニューデリー、ジャカルタ、ナイロビの7ヶ所に展開している。当初はネットワークのホームページへの動画報告や同ネットワークのデジタル局「ABC Now」などへの出稿が主な任務だったが、今では朝夕の看板番組「World News with Charles Gibson」「Good Morning America」にも登場している。

ABCニュースのデイビッド・ウェスティン社長は、業界誌「ハリウッド・リポーター」とのインタビューの中で、「デジタル技術のおかげで、編集機や送出機材、さらにはスタジオを備えた従来型の支局を設置する必要が無くなった。これまでは、各支局が現地でポスト・プロダクション作業も請け負っていたが、これからはレポートすることに的を絞っていくつもりだ」と語っている。今後、各特派員は、片手で持てる操作が簡単なデジタル・カメラを持参し自らが撮影。事務所は自宅を利用し、簡単な編集はパソコンで行うほか、映像素材はインターネット経由で伝送することになる。また事故現場などからの伝送用に携帯型の伝送機器も備えているという。

ABCニュースは、ロンドンなどの重要拠点は引き続き維持するとしているが、同ネットワークの関係者は、ソウルなどのミニ支局7ヶ所(7人)の運営費が従来型のフル装備支局(パリ)1ヶ所のもので賄えることを指摘しており、今後はこうしたミニ支局の開設が増えることを示唆している。すでに、南米やイランを念頭に検討が始まっている模様だ。

ライバル局NBCも、カイロ、モスクワをはじめ、パキスタンやアフガニスタンなどで、同様なワンマン支局を活用しているという。