米DVD販売が大ピンチ


「世の中が不況になればハリウッドが儲かる」 米国の娯楽業界でよく耳にする決まり文句だ。大恐慌時に映画業界が栄えた経験に由来するという。今でも不景気になれば、ハリウッドが潤うという図式に大きな変化はない。生活者はお金のかかる旅行や商品の購買などを控え、映画鑑賞を手軽な娯楽として利用するからだろう。しかし、今年はその“常識”がハリウッド業界に通じなくなる恐れがある。映画業界にとってドル箱的存在のDVDの売上げが急減しているためだ。ハリウッドが世界市場における興行収入の70%をDVD販売に依存しているとあれば同業界が抱く危機感のほどが伺える。

英ファイナンシャル・タイムズ紙によると、米国内における今年のDVD販売とレンタル料の総売り上げは昨年比7.5%減の216億㌦(約2兆520億円)となる模様。米調査会社ニールセン・ビデオスキャンの予測はさらに悪く、今年7~9月期のDVD販売は昨年同期比9%減。映画会社にとって最も利益率の高い新作映画のDVD販売は22%も落ち込んだ(同期)。

DVD販売不振の理由を一言で表すことは難しいが、デジタル・メディア、特にインターネット上の動画配信の普及でDVD購入を介さずに映画が手軽に視聴できるようになったことが要因の一つとして挙げられている。今年5月に封切られた映画「アイアンマン」は9月にはアップル社の配信サイト、アイチューンズで2.99㌦(約285円)で発売されたが、発売後わずか1週間で100万㌦(約9,500万円)の売上げを記録したという。

さらに、映画業界にとって痛手となっているのが新世代DVD「ブルーレイ」販売の予想外の不調ぶりだ。DVD販売売上げでトップにたつワーナー・ブラザース社によれば、当初の目標売上高を25%超下回っているという。ブルーレイについては、東芝陣営のHD DVD規格撤退後も57%の人が「ブルーレイが唯一の規格として定着するかどうか見極めたい」(ニューヨーク・タイムズ紙)と考えていて、この辺も障害になっている。