米FCC、デジタル化周知活動引き締め

地上波テレビ放送の完全デジタル化が来年2月17日に迫った米国で、周知活動に関する政府による厳しい姿勢が示された。米連邦通信委員会(FCC)はこのほど、周知活動を怠ったケーブルテレビ(CATV)事業者やテレビ番組の再送信サービスを手がける電話会社に対し、総額1100万㌦(約10億円)の罰金を課す方針を明らかにした。11月末の段階でデジタル対応が整っていない世帯が800万軒にものぼる(ニールセン社調べ)という報告もあり、FCCが手綱を締めにかかっているようだ。

FCCのケビン・マーチン委員長は声明の中で、「CATV業者は加入者へ月極め請求書を送る際に、完全デジタル化に関する通知を明記することが義務付けられているが、これらの作業を怠っているCATV業者が7社に上る」と指摘した。罰金が課せられるのはこの7社などに絞られる模様。各ローカルテレビ局も周知のための番組やCMを放送することが義務付けられているが、放送事業者は今回の処罰の対象にはなっていないという。

米国では9月7日に全米に先駆け、テストケースとしてノースカロライナ州ウィリミントン市でアナログ放送が停止されたが、「テレビが見られなくなった」世帯は全体の1%ほどに留まり、デジタル放送への移行は無難に進むという楽観論もある。しかし、その一方で同市のテレビ市場が極めて小規模なことと、受信状況が容易な地形だったこともあり、必ずしも全米市場の参考にはならない、と懸念する声も少なくない。また、来年1月20日のオバマ政権発足にともない、FCCの委員構成も総入れ替えされる予定だが、完全デジタル化が成功裏に行われるためには、新旧政権間の完全デジタル化移行に関する入念な引継ぎが欠かせないとの指摘が出ている。