米TV報道、イラク撤退を加速

オバマ新政権の発足を1月20日に控えた米国のテレビ報道態勢に大きな変化の兆しが見え始めた。イラクに派遣している報道陣をアフガニスタン・パキスタンにシフトするというもの。3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)はすでにイラク特派員の常駐を取りやめた模様だ。24時間体制で特派員を派遣しているニュース専門局CNNやFoxニュース・チャンネルなども3大ネットに追随する気配だ。

CNNの元バグダッド支局長を務めたこともあるジェーン・アラフ氏はニューヨーク・タイムズ紙に、「イラク戦争は、予想以上に長引き、視聴者の興味も減退気味。予算的にも米報道機関がフルタイム体制を維持できる限界を超えてしまった」と、説明している。NBCのバグダッド特派員(2005~2007年)だったマイク・ボエッチャー氏は、「米国人は、戦争映画を見ればわかるように、ハッピーエンディングが大好き。イラク戦争は長すぎ、ハッピーに終結する様子もない。いまではテレビ視聴者は、イラク報道が始まるとチャンネルを回してしまう」とイラク戦争の不人気ぶりを説明している。

テレビ報道業界のコンサルティングにあたるアンドリュー・タイダル氏によると、3大ネットワークが今年イラク戦争報道に費やした時間は昨年12月19日時点で423分。2007年の1888分に比べ大幅に減少している。それに加え、オバマ次期大統領がイラクからアフガニスタン・パキスタンに重心を移す外交政策を明らかにしていることも、米メディアの方針に大きな影響を与えている模様だ。