米アップフロント売上げを楽観視


 9月から始まる米テレビ界の新シーズンで放送される番組の編成案発表とCM予約販売が行われる重要イベント「アップフロント」が5月中旬から各ネットワークテレビごとに順次始まる。景気後退の影響で未曾有の広告不況を経験した昨年とは一転して、売上高20%増を予想する市場関係者も現れるなど、楽観的な見方が支配的だ。バークレイズ銀行の投資銀行部門「バークレイズ・キャピタル」のアナリスト、アンソニー・ディクレメンテ氏は業界誌「ハリウッド・リポーター」に、「今年のアップフロントでは、地上波4大ネットワーク(ABC、CBS、Fox、NBC)のCM売上高が、昨年比20%増となる82億6000万㌦(約7850億円)に達するだろう」との見通しを披露している。


ディクレメンテ氏は楽観視する根拠として、①番組視聴率が上昇傾向にある②景気が回復基調にあり各企業が自信を取り戻しつつある③代表的な広告主である自動車メーカーの広告予算が増額している④昨年のスキャター市場が活況を呈し、CM価格がアップフロント比15-20%増で取引された、などの点を挙げている。


メディア・サイト「メディア・ライフ」が広告主やメディアバイヤーを対象に行ったアンケートでは、アップフロント売上高が、「3-10%」「10%以上となる」と答えた人が全体の三分の二に達した。


 バークレイズによる各ネットワーク別の予想売上高を見ると、CBSネットワークが昨年比27.5%増となる24億3000万㌦、ABCが同16.2%増の22億1000万㌦、Foxが同22%増19億6000万㌦、ここ数年不振が続くNBCも同12.8%増16億5000万㌦と、いずれも二桁台の売上増を見込んでいる。特筆すべきは、プライムタイム枠が他社に比べ週当たり5時間短いFoxネットワークが大健闘していることだろう。逆に二桁台成長とはいえ、売上高がFoxを下回りそうなNBCの苦悩ぶりが印象的だ。


ちなみに、アップフロントでの交渉はプライムタイム(午後8-11時)で放送される番組が対象。通常は65%から75%のCM枠が予約販売され、残りの枠については、シーズン開始直前や途中に行われる交渉「スキャター・マーケット」に温存される。ネットワークと広告主の経済状況のバロメーターとして、毎年、その成り行きを業界全体が注視する。