米テレビ台数が20年ぶりに減少


米国で年々増え続けてきたテレビ保有世帯数が減少傾向に転じたことが明らかになった。米ニールセン社がこのほど発表したもので、9月から始まる新シーズン(2011-12年シーズン)におけるテレビ世帯数は全世帯の96.7%に相当する11470万軒と、現行シーズンの98.9%、11590万軒を下回るという。米国でテレビ世帯数が減少するのは過去20年間で始めてのことだという。

 

その要因のひとつに挙がっているのが20096月に実施された地上波デジタル放送への移行だ。ニールセンによれば、096月以前に屋外や室内アンテナなどでアナログ放送を視聴していた直接受信世帯の多くがデジタル化をきっかけにテレビをあきらめた模様だ。同世帯の中で、低所得世帯の人々が高額なデジタル対応型テレビの購入をあきらめたためだ。従来のアナログ受像機でも受信機や専用アンテナを購入すればデジタル放送を視聴することはできるが、受信機や専用アンテナを購入するわずらわしさも、同世帯にテレビを断念させる理由になったという。これらの世帯は、都会から離れた農村地域に集中している模様で、デジタル波が受信しずらい地域であることを指摘する向きもある。

 

もうひとつの理由が、若者層の間で浸透し始めている新しいテレビ視聴習慣だ。ノートと鉛筆の代わりにパソコンで育った若者たちにとって、テレビ番組は好きな番組を好きな時にインターネット上でダウンロードしてパソコン上で視聴するというのが新しい習慣として定着している。今後も、「テレビ番組は見るが、テレビを持たない」世代が拡大する可能性は十分にあることが指摘されている。

 

そして、テレビ保有世帯の減少傾向がこのまま進めば、テレビ事業者や広告主にとって死活問題に発展しかねないとの懸念も浮上し始めている。ニールセン社では、「視聴方法は多岐にわたってきているが、ビデオ映像を視聴する消費者の数はこれまで以上に増えていることは様々な調査で明らかになっている」と、冷静な対応を呼びかけているが、同時に、ネット上でテレビ番組を見る人々を視聴率測定の対象に入れるシステムの検討に入った。 <テレビ朝日アメリカ 北清>