米ネットワーク広告収入、今シーズンは安泰か


米著名アナリストが昨年暮れ、米国の総広告費が2007年から今年にかけ3年連続で落ち込むという、大恐慌以来最悪の予測を出したばかりだが、4大ネットワークの広告収入は、今シーズン(5月終了)に限り安泰とする見通しが出た。ニューヨーク・タイムズ紙の予測によると、新聞、雑誌、ラジオに加えローカルテレビ局の広告費がそろって減収が見込まれる中、地上波ネットワークテレビだけは年明け後も例年並みの広告収入を維持するという。

ネットワークは、視聴者によるテレビ離れに加え、DVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)やインターネット上の番組視聴(オンライン・ビデオ)の普及で、放送時の番組視聴数が下降減少を示し、視聴率が前年比二桁台の落ち込みを見せているところもある。それに追い討ちをかけるように、経済の先行き懸念が一段と強まっており、広告主が番組スポンサーから撤退する傾向も高まっているのが現状だ。

それにもかかわらず、好況時なみのレベルを維持できる背景には、「全国隅々の生活者に到達できる媒体はネットワークテレビ以外にない」、という理由があるようだ。米広告会社大手「グループM」の投資部門責任者リノ・スキャンゾニ氏は、「リセッション下、広告主が求めているのは、最も効率のいい広告効果だ。いまのところネットワーク以外に効率のいい媒体が見当たらないというのが広告界の総意だろう」と、述べている。

ただ、来シーズン以降、「ネットワークだけは例外」という状況が続くかどうかは不透明な情勢だ。来年9月から始まる新シーズンに向け新編成案内とプライムタイム枠内で放送される番組のCM予約販売が行われる「アップフロント」が5月に開かれるが、このアップフロントが、今後のネットワーク広告収入の行方を占う試金石となりそうだ。