米プライムタイム番組が不況反映


「専業主婦がパートタイムの仕事を始めた」「政府の公的支援を受けた会社経営者が高級ワインを、自腹を切って注文している」「有名な住宅街の一角に“差し押さえ”のサインが立てられた」 いずれも最近、米プライムタイムの人気テレビ番組に現れたエピソードの一部だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、不況がテレビ番組の内容を大きく左右し始めていると分析している。

ABCネットワークの人気ドラマ「デスパレートな妻たち(邦題)」やFoxの長寿番組「シンプソンズ」といった、米テレビ界を代表するヒット番組が次々と世相を反映したエピソードに切り替えている。世の中が暗くなれば、現実逃避型の娯楽番組が増えるのがこれまでの例だったが、今回は違うようだ。「デスパレート」のクリエーター兼エクゼクティブ・プロデューサーのマーク・チェリー氏は、「脚本家が考えることは世の中が考えることと同じ」「経済苦境で視聴者は気分が晴れるような内容の番組を求める人が多いことは知っている。しかし、同番組は高級住宅街が舞台。主人公のモデルは、まさに金融危機に直撃を受けている人々だ。番組内容が影響を受けないわけにはいかない」と述べている。また、犯罪捜査ドラマなどにも、経済不振に影響を受ける内容が盛り込まれるようになったという。

一方、報道番組にも不況にあえぐ市民の声や姿を紹介するコーナーが急増している。ABCネットワークの全国向け夕方ニュース「ワールド・ニュース」では職を失った市民の葛藤ぶりをシリーズで追うコーナーを設けたが他局も追随している。また、NBCの朝の情報番組「トゥデー・ショー」の人気キャスター、マット・ラウワー氏は、当初予定されていた世界の珍しい場所を紹介するコーナーが、米生活者のムードにそぐわないと、急遽取りやめ。国内キャラバンに切り替えた。