米モバイル市場、ブレイクには程遠く


携帯電話を使った動画配信(以下モバイル・ビデオ)が米国で紹介され数年が立つが、生活者の心を掴めないでいる。しかし、ここにきて、業界アナリストの間で、緩やかなペースではあるものの普及の兆しが見えてきたと指摘する声が出てきた。米調査会社ニールセン社がこのほど発表した調査結果によれば、今年4-6月期のモバイル・ビデオ・ユーザーは1,500万人、昨年同期比25%の増加を示しているという。来年に向け、さらに増加率が拡大する傾向もあるという。

携帯電話会社が契約料の値下げに動き出していることや、アップル社が発売したアイフォン人気などがモバイル・ビデオ人気を助長させている模様だ。また、メディア企業の間で、モバイル・ビデオに適したコンテンツを積極的に提供する動きも見え始めている。ユーザーが何を求めているのかが鮮明になってきたからだ。モバイル・ビデオ技術会社「トランスペラ」の最高経営責任者(CEO)フランク・バビエリ氏は業界誌「テレビジョン・ウィーク」に、「モバイル・ビデオ配信を成功させる鍵は、速報性を大切にアピールすることだ」と強調している。バビエリ氏によれば、モバイル・ビデオ利用者の間で人気のコンテンツ(番組)に、ニュース、天気予報、スポーツが挙がっているという。

CBSネットワークやFoxネットワーク、さらにはスポーツ専門局ESPNなどは、ゴルフやアメフトなど人気スポーツイベントをモバイル配信する動きを加速させている。そして、来年2月に予定されている完全デジタル化以降、米無線通信技術大手クアルコムが、空きチャンネルを利用した携帯電話向けテレビ配信の全国展開を予定していることも、モバイル・ビデオの普及に拍車をかける一要因になりそうだ。