米地デジ移行、大きな混乱なし


米国の地上波テレビ放送が12日、デジタル放送に完全移行された。当日、従来のアナログ放送を停止したのは全米971のテレビ局。カウント・ダウン・セレモニーなどはなく粛々と行われた。ニューヨークでは7つのローカル局が完全デジタル化され、ABCネットワークの直営局WABC-TVが午後12時半、CBC直営局WCBS-TVが午後2時、Fox直営局のWNYW-TVが午後11:59などと、時差をつけてアナログ低波が実施された。


米国ではケーブルテレビや衛星放送事業者が提供する再送信サービスでテレビを見ている世帯が全体の9割近くを占めるため、当日は大きな混乱は起きなかった模様だ。全米放送事業者協会(NAB)は声明の中で、「デジタルへのスイッチは成功裏に終わった」と総括している。米通信委員会(FCC)も、「広範囲にわたる混乱を生じることなく完全デジタル化が完了した。移行を無難に切り抜けた。大成功だ」と説明している。


ただ、FCCが設置したコールセンターなどには当日、全米に1500万軒(NAB推定)とも言われる直接受信世帯から、これまでの新記録となる31万7450件の問い合わせがあった。二日後の14日(日)には6万件、週明け月曜日には1万件にまで激減したが、FCCのコップス委員長代行は、「デジタル化の仕事は1日で終わるわけではない。まだ残された仕事がたくさんある」と述べている。米政府はアナログ受像機でもデジタル放送視聴が可能となるデジタル・チューナー購入の補助にクーポン券を発行したり、テレビ各局が盛んな広報活動を展開したが、当日の未対応世帯は200万世帯を超えた模様だ。


ちなみに、FCCに寄せられた問い合わせの中で最も多かったのが、デジタル・チューナーの扱いに関するもの。全体の30%を占めた。その他20%が受信状態に関するもの。「今からでもクーポンの申請が出来るか」などという質問も多かったという。

米国の地デジへの移行は当初、今年2月17日が期限として設定されていた。しかし、低所得者層や高年齢層、さらにはヒスパニック系(スペイン語を母国語とする住民)世帯を中心に約650万世帯(全米の5.7%)が未対応なことが明らかになり、「社会問題になる」ことを懸念した連邦議会が期限を4ヶ月延長する緊急立法が成立していた。