米報道番組がスカイプを多用


 最近、米テレビネットワークの看板報道番組でインターネット電話サービス「Skype(スカイプ)」の利用が目立つ。CNNなどニュース専門局はもとより、毎日午後6時半からABC、CBS、NBCの3大ネットワークが全国向けに放送する夕方ニュースを見ていると、スカイプを使ったインタビュー・コーナーが必ずといっていいほど登場する。AP通信のメディア担当記者、デイビッド・ボーダー氏は、最近放送された番組の中で、ABCニュースの司法担当記者ピエール・トーマス氏がワシントンにある自分のオフィスからコンピューターに映し出されたコネチカット州にいるゲストにインタビューしている模様を例にとり、「もはやテレビ・ジャーナリストは、取材のために自分のオフィスから出かける必要がなくなったようだ」と解説している。


AP通信によれば、米メディアでスカイプの利用がここ数ヶ月特に顕著になっており、重要なツールになっている。ニュース専門局「Foxニュース・チャンネル」では、スカイプの名前を織り込んだインタビュー・コーナーを設置しているほか、NBCネットワークの朝の情報番組「Today(トゥデー)」では、スカイプを使い視聴者の生の声を取り込んでいる。ABCネットワークの全国向け夕方ニュース「ワールド・ニュース」のエクゼクティブ・プロデューサー、ジョン・バナー氏はAPに対し、「(スカイプを使えば)全国津々浦々の人々に瞬時にアクセスすることが出来る。こんな素晴らしいテクノロジーを使わないのはばかげたことだ)とスカイプの利便性を強調している。スカイプ側もテレビ局に全面協力の体制を敷いている。番組中にスカイプを最も有効に使う方法など、技術的なアドバイスも含めすべて無用で提供している。


放送局側からすれば、取材費の大幅削減に役立つこと、締め切り時間が迫っていてもスカイプを使えば、専門家などとのインタビューが可能になるなど、メリットがあることは誰しもが認めるところだ。ただ短所は、画質が乏しいこと。通信状況によっては、画面がくずれたり口の動きと音声がずれてしまうなどの問題が発生することが少なくない。そんなことから、スカイプの利用は緊急時などに限定されるべきだ(CBSイブニン・ニュースのエクゼクティブ・プロデューサー、リック・キャプラン氏)などの意見もあるようだ。また、「実際に記者が相手に会ってインタビューすることで内容が豊かになることが多々ある」(MTV元プロデューサー、スティーブ・ローゼンバム氏)と、スカイプを多様すればテレビ・ジャーナリズムの価値を失ってしまう危険性を指摘する声も上がっている。