米報道番組が映像すり替え


トヨタ自動車の車の「突然の急加速」問題を報道したABCニュース の取材方法に「倫理的な問題」があった可能性が指摘されている。AP通信は3月11日、「ABCニュースに頭痛を与える2秒間のビデオ映像」と題した記事 を配信、「ABCが全国向けに放送した夕方のニュース番組『ワールド・ニュース』の中で、電子制御システムの欠陥を指摘する報道の内容に倫理的な問題が あった。トヨタがABCに対する心証をますます害している」と伝えている。この問題をいち早く伝えた、ゴシップ・スクープ・サイト 「Gawker.com」は、「やらせ、そして、うその報道」だったなどと報じている。


問題視されているのは急加速を示すタコメーターの映像。ABCの記者が、急加速問題は電子制御システムの不具合によって起こると指摘した南イリノイ大学の ディビッド・ギルバート準教授の走行実験に同乗し、「突然の急加速」状況を再現したが、エンジンの回転数を示すタコメーターのクローズアップの映像(約2 秒)が、実は駐車中のものだったことが発覚した。
ABCは映像を差控えたことを認めており、「編集上の間違った判断だった」としている。差し替えた理由については、「走行中にタコメーターのクローズアッ プ映像を撮影することが困難だったため」としているが、「エンジン回転は、実際に走行中にも何度も上がっており、内容を変更したわけではない」と主張して いる。


AP通信はまた、実験車を運転したブライアン・ロス記者が、故意にエンジン回転を上げることを事前に知っていたにもかかわらず、「(急加速に)動揺してしまった。車を止めるのが大変だった」などと番組中で報じていた」と紹介している。


ニューヨークのシラキュース大学ジャーナリズム学科のシャーロット・グライムス教授はAP通信に、「報道の中で、視聴者に信憑性を疑わせる箇所があるならば、それだけで重大な問題だ」とABC報道姿勢に疑問符を投げかけている。


番組は、2月22日に放送されたが、同シーンはその後、同局のホームページなどで再三にわたり使われた。ABCのロス記者は、昨年暮れからトヨタの急加速 問題を徹底追及していることで知られている。ギルバード準教授は番組がきっかけとなり、連邦議会の公聴会でも証言している。