米広告市場、本格的な回復にはまだ時間

米メディア企業の4-6月期決算が出揃い、そろって増収増益を記録した(8月20日号既報)。不況で最悪だった昨年に比べ自動車メーカーや金融業などが広告支出を増やしたおかげで各社の広告売上が目を見張る回復振りを示しているためだ。しかし、本格的な復調を見るまでにはまだ相当の時間がかかりそうだ。


米有力調査会社「キャンター・メディア」の調べで、今年1-5月までの期間に、旅行、映画、製薬会社などといった業界が軒並みに広告予算の削減をしたことが明らかになった。旅行・観光業界の広告支出は前年同期比9・7%減の18億㌦(約1530億円)、映画会社は同7.5%減となる147億㌦(約1兆2495億円)といった具合だ。また、世界最大の小売店チェーン「ウォルマート」の広告支出が同30.3%減の3億2890万㌦(365億円)となっていることも注目されている。キャンター・メディアでリサーチ部門担当の上級副社長を務めるジョン・スウォルン氏はウォールストリート・ジャーナル紙に、「広告市場の本格的な復活までにはまだしばらくの時間がかかりそうだ。(すべての)広告主がどのようなタイミングで広告予算を拡大させるかにかかるだろう」と語っている。ウォルマートについては、「同社の動向は小売業界全体が注目している。同社の広告支出がプラスに転じれば業界全体に波及効果をもたらすことになるだろう」としている。


それでも、広告代理店大手ゼニス・オプティメディアによれば、今年の総広告費は昨年比1.1%増の1499億㌦(約12兆7415億円)に達する見込みだ。不況の影響で昨年の広告費は前年比12.3%も落ち込んだことを考えれば、今年の回復振りは予想以上に早いペースだという。ただ、ピークを記録した2007年の広告支出額1776億㌦(約15兆960億円)には及ばない数字だ。


ゼニス・オプティメディアの戦略部門担当社長ロブ・ジェイソン氏は、広告市場の復調には、「企業がスポーツ・イベントなどに長期にわたるスポンサー契約を結ぶ機運が生まれることが必須だ」と説明している。