米連邦控訴裁がネットの中立性を否定


米最大のケーブルテレビ(CATV)事業者で最大のブロードバンド(高速大容量)通信プロバイダーでもあるコムキャストが、同社のブロードバンド網に対する特定サービスのアクセスを制限したのは違法だとする米連邦通信委員会(FCC)の停止命令に待ったがかかった。米連邦控訴裁判所は4月6日、FCCにはインターネットを利用するすべてのユーザーを平等に扱うとした「インターネットの中立性」(以下、ネットの中立性)の規則を課す法的権限はないとする判決を下したからだ。コムキャストなどがかねてから主張してきた、「大容量を消費する業者がインターネットの帯域をただで利用することは不当。ネット上の交通渋滞を引き起こし、一般利用者によるアクセスを著しく妨げることにもつながる」などとする言い分を認めたかたちだ。


コムキャストは2008年、大容量ファイル共用サービス「BitTorrent(ビット・トレント)」のアクセスを制御したとされる問題で、FCCから制御を解除するよう命令を受けていた。FCCは、「インターネット・プロバイダーが、アクセスできる業者をコントロールすれば、消費者の利益を損なわれる。ネット上ではすべてのコンテンツが受け入れられるべきだ」と主張、ネットの中立性を促してきた。


控訴裁の判決に、ユーチューブを傘下におくグーグルやマイクロソフトなど、様々なネット企業から、「技術革新などを阻止することにつながる規制だ」などと反発が出ている。コムキャストなどが、「ネットにただ乗りしているコンテンツ・プロバイダーなどには一定の使用料を課すべきだ」との考えを示していることにも警戒感を隠し切れない様子だ。


一方、消費者団体などからは、今回の控訴裁の判断が、”開かれたインターネット“の否定にもつながるほか、連邦政府が推進しようとしているブロードバンド(高速大容量)通信網の整備計画にも影響を与えるとして、懸念の声が上がっている。今後は、オバマ政権の意向を受けて、議会でネットの中立性を義務付ける法律策定の動きが活発化する可能性もあるが、野党の反対も予想され先行きは不透明だ。