英国人のハリウッド侵略が始まった?!


「英国人の米国侵略」。今ハリウッドでこんな言葉が囁かれ始めている。米国で制作、放送されているドラマ番組に英国人俳優が急増しているからだ。ニューズ・コーポレーション傘下のテレビ番組制作会社「20世紀Foxテレビジョン・スタジオ」で配役担当責任者を務めるシャロン・クライン氏は、「過去に例がないほどの数の英国人俳優と出演契約を結んでいる」と語っている。

米有料チャンネル大手「HBO」の人気番組「ソプラノス」にもゲスト出演したことがあるレイ・スティーブンソンさん(写真)は、生粋の英国人。ロンドンで演劇俳優としてのトレーニングを受けた本格派だが、CBSネットワークが新シーズンに向け制作している新ドラマのパイロット版に出演が決まった。同番組は、ニューヨーク州のロングアイランドを舞台にした犯罪ドラマで、主役を務めるスティーブンソンさんの役割は地元警察官。イギリス英語とアメリカ英語ではアクセントや発音などがかなり違うため、英国人俳優はアメリカ英語をマスターすることが条件だが、スティーブンソンさんはすっかりロングアイランド訛をマスターしてしまった。

スティーブンソンさんのような英国人俳優の存在は増加の一途をたどるばかり。なんと新シーズン向け新番組パイロット版全体の三分の一に彼らが主役級で出演しているという。こうした「英国人の米ドラマ侵略」の背景には、テレビ番組向けの米国人男優不足が挙げられる。クライン氏などによると、35~45歳代の男優の多くが映画にとられてしまっている。

さらに、ネットワークの間で米視聴者に新鮮な俳優を起用する傾向が高まっているほか、ケーブル局もオリジナル番組の制作に力をいれており、俳優不足は深刻さを増すばかり。ある制作関係者は、「大リーグがどんどんチームを増やしたおかげで、各チームが優秀なピッチャーを確保するのが困難になったのと同じ状況だ」と説明している。