重要番組が人気動画配信サイトから撤退


 米ネットワークテレビ番組の全編無料配信で大人気の動画配信サイト 「Hulu(フールー)」がちょっとしたピンチにたたされている。米メディア企業大手バイコムが傘下のケーブル局の人気番組を3月9日をもって撤退したか らだ。特にフールーにとって頭の痛いのが、若者に圧倒的な人気のチャンネル「コメディー・セントラル」が放送する風刺番組「The Daily Show」と「The Colbert Report」の撤退。両番組は、2月最終週の人気番組番付で、それぞれ、7位と10位にランクされている重要なコンテンツ。フールー人気に少なからぬ打 撃を与える可能性がある。


撤退の理由は、バイアコムとフールーとの間で行われてきた広告収入の分配方法に関する交渉が決裂したこと。バイアコムは、両番組自身のサイトの1月におけ るユニーク・ビジター数が、「thedailyshow.com」78万9000件、「colbertnation.com」が27万5000件と人気を 博していることもあり、今後は、番組独自のホームページに絞って番組配信を続ける。動画CMの挿入方法や内容をコントロールできるようになるほか、収益を 独占できるメリットもありそうだ。
他社のサイトにも積極的に配信し、自社の番組の普及に努めてきた米メディア企業各社が、広告収入の確保などを目的に、配信方法を集約し始めているが、バイアコムの動きもこの流れに乗るものだ。


米メディアの反応を見ると、「各社、番組のインターネット配信による収益率を上げるため、様々な方法を模索しているが、バイアコムはフールーを使った商業 実験は失敗に終わったと判断した」(ニューヨーク・タイムズ紙)、「ネットワークテレビの番組配信が柱だったメニューに、若者の間で圧倒的な人気のある ケーブル局の番組が加わったことで、フールーの価値が一段と上がっていた。しかし、今回の撤退で、独立系サイトにおけるケーブル局番組の無料配信が難しい 局面に立たされていることが浮き彫りになった」(フォーブス誌)などと指摘している。創設わずか3年で、ユーチューブに次ぐ動画配信サイト2位にのし上 がったフールーは、コンテンツ・プロバイダーからの強い圧力のもと、番組の一部を有料化することも模索中だが、あくまで無料型を求めるユーザーとの板ばさ みになっている状況だ。