金融危機でHDテレビの買い控え


米国では小売業界にとって一年で一番大切な年末商戦が間近に迫っているが、金融危機の影響で個人消費が冷え込みそうな情勢だ。そして、需要減が予想される家電製品の中でも薄型テレビに代表されるHD(高精細度)対応型テレビを買い控える動きが一段と広がっていて、テレビメーカーばかりか、衛星放送業界にも波紋が広がっている。

衛星放送事業者とケーブルテレビ事業者は顧客争奪合戦で熾烈な戦いを繰り広げているが、衛星大手ディレクTVはHDチャンネルを100チャンネル用意し、果敢な攻勢をかけていた。消費者の間でHDテレビの購入を控える傾向が高まれば、新規加入者の獲得戦略に暗雲が立ち込めることになり、危機感を募らせている。逆に衛星放送の攻勢にあえぐケーブルテレビ事業者にとっては一服できるチャンス到来といったところ。

米調査会社サンフォード・バーンスティンによれば、9月の家電製品売上げは昨年同期比14%減少。9月以前の減少率3~6%を大きく上回り、すでに不振ぶりが現れている。家電量販店大手ベスト・バイでは、9月の売上げが4%の成長を示すとした当初の予測を急遽2%減少と、大幅下方修正した。

サンフォード・バーンスティン社のアナリスト、クレイグ・モフェット氏は、ウォルストリート・ジャーナル紙とのインタビューの中で、「消費者の間で金融不安による生活不安が高まるのは当然のこと。買い控えムードが広がり、ぜいたく品と位置づけられているHDテレビが敬遠されるのは避けられない状況だ」と分析している。「来年2月17日の完全デジタル化を控えた米国で、米消費者の間でHDテレビを受け入れる機運にブレーキがかかる恐れもある」(投資銀行大手コリンズ・スチュワートのアナリスト、トーマス・イーガン氏)という声も上がっている。