米国で「テレビ世帯」の定義を見直す機運が高まっている。米国では現在、家庭内にテレビ受像機を保有し、直接受信のみならず、ペイテレビと呼ばれるケーブルテレビ(CATV)、衛星放送、電話会社が提供する再送信サービスに加入しテレビを見ている世帯をテレビ世帯と位置付けている。視聴率調査を独占するニールセン社では同テレビ世帯の視聴状況をもとに視聴率を発表している。
テレビ受像機を保有せずパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話)さらにはタブレット型の情報端末などを使ってテレビ番組を見ている生活者はテレビ世帯の一員とは見なされていないのが現状だ。
ところが、ニールセン社に対し、現行のテレビ世帯の定義を見直すよう同社の加盟社であるネットワークテレビなどから圧力がかかっている。そこで、ニールセンでは加盟社の代表者などを中心に特別調査委員会を結成。今年3月末をめどに新しいテレビ世帯の定義を発表し、来る9月から始まる新シーズン(2013-14年シーズン)から導入したい考えだ。
米メディア業界誌バラエティーなどによると、新しいテレビ世帯にはインターネット接続機能内蔵型の新テレビ、いわゆるスマートテレビや、アップルTVなど外付けネット接続器をテレビにつないで、ブロードバンド配信されている番組を視聴している世帯も視聴率測定の対象に含まれることになりそうだ。インターネットテレビを使った番組視聴は、リアルタイムにこだわらずネットワークテレビなどがホームページ上などに提供する過去の番組視聴、つまりオンデマンド視聴も含まれるのが特徴だ。
同委員会やニールセン関係者によれば、長期目標はタブレットやスマートフォンなどテレビ以外のあらゆる手段で番組を視聴する人すべてを視聴率調査の対象にすることがだ、今回はデータ不足とするニールセンの主張を取り入れたかたちで先送りされることになりそうだ。
「テレビ世帯」の見直し機運の背景には、テレビ世帯数の減少傾向に危機感を覚えるテレビ事業者らの意向が強く働いている。2011-12年シーズンの米国テレビ世帯数は1億1590万軒と前シーズンの1億1470万軒から落ち込んだ。世帯数が前シーズンを下回ったのは20年ぶりのことだが、現シーズン(2012-13年シーズン)開始直前にさらに50万軒減ったことが明らかになり関係者はテレビ離れ現象の表れとして深刻に捉えている。