米映画界最高の栄誉とされるアカデミー賞の発表と授賞式が2月24日、カリフォルニア州ハリウッドで開催された。第85回授賞式の模様は今年も米地上波テレビ放送ABCネットワークが生中継で全国向けに独占放送した(米東部時間午後8 時30分から約3時間半)。ニールセン社の速報によれば、プライムタイムの平均世帯視聴率は昨年比4%増となる26.6%(シェア41%)と、07年来最高の記録となった。また、広告主が重視する18-49歳層の視聴率は同19%増の12.1%を獲得した。平均視聴者数は昨年比100万人増となる4000万人を超えた模様だ。
高視聴率の背景をみると、アカデミー賞最高の栄誉とされる作品賞にノミネートされた9つの作品のうち7本が興行収入1億㌦の大台を超える、いわば巷で人気の映画で占められたことが大きい。これまでの候補作は俳優の演技力や作品内容などを重視するアカデミー会員らの投票に左右され、一般の映画ファンの嗜好とは温度差があり、受賞式への関心が薄まる場合が多々あるとされている。
同番組はNFL(米プロフットボール・リーグ)の王者決定戦スーパーボウルに次ぐ視聴者数を誇る番組として米テレビ界で特別な存在感を誇っているが、昨年はグラミー賞(米音楽界最高の栄誉)中継番組の視聴率に及ばず「アカデミー賞人気に陰りが出ている」などと指摘されていた。
さて、同番組内で放送されるコマーシャルは、スーパーボウルに次ぐ高価な料金が付くことでも知られるが、広告業界誌アドバタイジング・エイジによれば今年は30秒CMが165-180万㌦で取引された模様。過去最高額となる08年の182万㌦には及ばなかったが、昨年の料金160-170万㌦を上回り健闘した。なお、同番組内のCM枠は2月初頭で完売、10年ぶりとなるスピーディーな売れ行きぶりだったという。
同番組の視聴者は、エンターテイメント系番組の中にあって、高額所得者や女性視聴者が多いことで知られる。スポンサーもそれら視聴者を狙ったヨーグルト・メーカーや高級マスタード・メーカーをはじめ、デパートメント・チェーン大手JCペニーなど、有力広告主が名を連ねた。CM出稿量ナンバーワンは7枠を買い占めた韓国自動車メーカー、ヒュンダイだった。
ちなみに、最も注目される作品賞には1979年にイランで起きた米大使館人質事件を題材としたベン・アフレック監督・主演の「アルゴ」が選ばれた。