ゾンビ番組が米TV界を席巻

米テレビシーズン(2013-14年シーズン)はミッドシーズンと呼ばれる中間期に突入しているが、不振ぞろいの地上波ネットワークテレビ放送を尻目にあるケーブル局番組が猛威をふるっている。その番組とは、中規模なメディア企業AMCネットワークス傘下の映画やドラマ専門チャンネル「AMC」が放送する『The Walking Dead(ウォーキング・デッド)。

同番組は“ウォーカー”と呼ばれるゾンビ(死んだ人間)がはびこるアメリカを舞台に、生存者たちがウォーカーと戦いながら安住の地を求めていく姿を描くホラー・ドラマ。今年で3年目に突入するが、じりじりと視聴率を上げ、米テレビ界全体が注目する空前のヒット番組になっている。シリーズ後半が始まった3月前半に放送された番組は、広告主がターゲットにしている1849歳層の視聴者数770万人を獲得。かつては米テレビ界人気ナンバーワンの座をほしいままにしていたオーディション番組『アメリカン・アイドル』(Foxネットワーク)や人気コメディー番組『ビッグバン・セオリー』(CBS)さらにはエミー賞受賞作品『モダン・ファミリー』(ABC)など地上波ネットワークの人気番組を総なめにした。

 

「ケーブル局といえばかつて、地上波テレビ番組の再放送が編成の中心で、視聴率が地上波テレビ番組を制覇するようなことがあればそれだけでニュースになったが、いまやケーブル局番組が勝利を収めることが珍しくなくなってきた」(業界誌「ハリウッド・レポーター」)のが現状だ。


AMCではウォーキング・デッドのほかにも、1960年代の米広告業界を描いた『マッド・メン』や『ブレーキング・バッド』(不治の病にかかった化学教師が家族に財産を残すために高純度ドラッグの精製に手を染めていくさまを描く)などヒット作を量産している。

 

ケーブル局の番組は、地上波テレビでは放送できないきわどい脚本や描写が可能で、ウォーキング・デッドなどの成功の要因となっていることが指摘されている。さらに、金融機関大手JPモルガンのメディア・アナリスト、アレキシア・クウァドラニ氏は、AMCがインターネット上の番組配信サービス「ネットフリックス」などにいち早く番組を積極的に提供してきた戦略が功を奏したと分析している。ソーシャルメディで話題になっている番組が気軽にキャッチアップ視聴できることで、放送時の番組視聴率を押し上げているという。

<テレビ朝日アメリカ 北清>