米ABCがサイマル放送アプリを展開

ウォルト・ディズニー傘下で地上波テレビ4大ネットワークの一つABCネットワークが、同ネットワークの放送をスマートフォンやタブレット型情報端末を使ってリアルタイムで視聴できるサービスを展開した。地上波テレビネットワークがネットワーク番組ばかりか、ローカル局制作番組やシンジケーション番組を含むすべての番組をサイマル放送でブロードバンド配信するのは初めてのケースだ。ディズニーABC テレビジョン・グループのアン・スウィニー社長は発表に当たって、「消費者が何を求めているのか常に注視しているが、視聴習慣が急速に変化していて我々もすばやく適応すべきだと決断した」と述べている。

 

同モバイル視聴にはペイテレビと呼ばれるCATV(ケーブルテレビ)や衛星放送事業が提供する番組送信サービスに加入していることが条件。「Watch ABC」と名付けられたアプリケーションをスマホやタブレットにダウンロードし視聴する。(当面は、アップル社のアイフォンと同社タブレット、アイパッドのみが対応)。ニューヨークとフィラデルフィア地域を皮切りに最終的には全米展開を目指している。テレビ放送と同じく、視聴は当該ローカル局のサービスエリアに限定される。

 

同サービスの展開には当初、ABC系列局などから猛反対の声が上がった模様だが、ネットワーク側は「番組は(テレビ受像機にこだわらず)好きな画面で見たいというのが消費者の声だ」と、説得。ABCネットワークと系列契約を結ぶローカル局13社を保有する米メディア企業「ハースト・テレビジョン」などが同サービス導入を決めた。

 

ABCネットワークは数年前にプライムタイム番組を放送翌日にインターネット上に解放したオンライン配信のパイオニアだが、今回も他社が追随するだろうとの見方が多い。ニューヨークでは地上波テレビ放送をパソコンやスマホなどで視聴できるようネット配信するスタートアップ企業が現れ、ネットワーク側は著作権侵害に抵触すると抗争中。ABCは新サービスが対抗手段にもなると考えているようだ。

 

米国ではネット上の番組オンデマンド配信“ネットフリック”や“フールー”などが大人気でテレビ離れがささやかれており、Watch ABCはこれら視聴者の離反を防ぐサービスとも言えそうだ。

 

一方、ABCの発表後、タイムワーナー傘下のケーブル局「TNT」と「TBS」が今夏を目標に同様なサービスを立ち上げることを発表した。

<テレビ朝日アメリカ 北清>