2ndスクリーン用アプリで視聴者獲得

米国でリアルタイム視聴を誘導しようとスマートフォンやタブレット型情報端末など“セカンドスクリーン”向けのアプリを活用する番組が増えている。米テレビ視聴者の40%以上がテレビを見ながらスマホやタブレットさらにはパソコンを利用する、いわゆるマルチタスキング常習者であることを逆手にとった戦略だ。米国で人気急上昇中のDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)視聴対策も念頭に置いているようだ。


同アプリを「ビデオ寸描(video vignettes)」と呼ぶ向きもあるが、番組放送時に同期して作動するのがポイントだ。例えば、空前のヒット作となっているホラー番組『ウォーキング・デッド』などで若者に人気急上昇中のケーブル局AMCネットワークスは5月下旬、カナダのバンクーバーにある番組出演者が勢ぞろいしあるロケを実施した。番組には一切使われないビデオ寸描の撮影だった。

6月上旬から始まった番組『The Killing』の番組宣伝用アプリのロケで、視聴者が番組視聴中に利用してくれることを期待して制作したものだ。同番組は今年で3年目を迎えるが、同アプリ利用者のみが知り得る登場人物の背景などを提供している。そのほか、番組放送中にスマホなどに自動的に飛び出す“ポップアップ”通知も組み込まれており番組関連の短い付録ビデオが視聴できる。

 

AMCでは、同アプリが話題になり、番組のリアルタイム視聴が増えDVRを使った追っかけ視聴が少なくなれば、と期待を寄せている。DVR視聴はCMの飛ばし視聴が可能なため番組サイドはもとより広告主から懸念が寄せられていることは周知の事実だ。

 

同様なアプリはAMCのほかにもコムキャスト傘下の人気ケーブル局USAネットワークでも自社制作の番組すべてに採用し始めている。若者に人気のケーブル局MTVでも、特定の番組で採用。出演者との短いインタビューなどが番組中に見られる仕掛けだ。

 

AMC関係者によれば、シーズン中に番組を見ながらセカンドスクリーンを利用した人は100万人超。

新たな視聴者発掘のフロンティアとして期待を寄せている。

 

しかし、同アプリにはリスクもありそうだ。あまり内容の濃いアプリを提供すれば、番組よりアプリに夢中になる可能性もあるからだ。同アプリに集中するあまりCM視聴を忘れられては元も子もない。米市場調査会社GfKは、「利用者が(同アプリを)いつどのように使うのか徹底した指導をする必要がある」と指摘している。

<テレビ朝日アメリカ 北清>