米テレビ界でスポーツ専門局ESPNの勢いが止まらない。地上波テレビCBSネットワークが46年間放送を続けてきたテニスの4大国際大会の一つ「USオープン」の舞台がESPNに移ることになったのだ。ESPNは5月中旬に行われた主催団体USテニス協会との交渉で、2015年から11年間にわたる独占放送権を入手することになった。ESPNはすでにUSオープンの部分的な放送権を握っているが、CBSが放送していた決勝ラウンドなどすべての競技の独占放送権を推定総額8億2500万㌦(ニューヨーク・タイムズ紙)で獲得した。
ESPNのジョン・スキッパー社長は声明の中で、「番組が地上波テレビからケーブル局に移ることが格落ちと見る向きがあるが、それは時代錯誤。むしろまったく逆で、イベントがESPNに移ることでより多くの視聴者を魅了することができる」と胸を張った。USテニス協会の最高執行責任者(COO)兼専務のゴードン・スミス氏も、「ESPNはスポーツ界において最も強いブランド。ESPNに舞台を移すことでUSオープンが米スポーツ文化においてかつてないほどの地位を得ることになる」と手放しの喜びようだ。
一方、CBSは昨年の大会中継番組の平均視聴者数が25年来の最悪記録となる200万人となり、15年以降の新契約の締結は難しい状況だった。CBSスポーツのショーン・マクマナス会長は、「CBSにとって経済的に意味のある契約交渉には至らなかった」と説明している。
ESPNはESPNとESPNの2チャンネルに加え、ブロードバンド・サイトESPN3を駆使し、CBS以上の視聴者を魅了できるとしている。将来的にはUSオープンが開催されるフラッシング・メドーの全17コートで繰り広げられる全試合の模様(130時間超)をカバーしたい意向だ。
米国ではESPNを中心に有力ケーブル局が次々と人気スポーツイベントの独占放送を獲得する流れが顕著。地上波テレビが独占権を握っている主な種目は米プロフットボール・リーグ(NFL)の王者決定戦「スーパーボウル」と大リーグのワールドシリーズぐらい。中でも高額放送権のスポーツイベントはESPNに集中している感がある。ちなみに、ESPNは11年にテニス4大大会の一つ「ウィンブルドン選手権」の米国内放映権をNBCネットワークから奪取。NBCが24年まで権利を保有する「フレンチ・オープン」決勝ラウンド以外すべてのメジャー選手権を独占することになる。ちなみに、フレンチ・オープン予選ラウンドはESPNが放送権を握っている。