ニューズ社、2社分割で新たなスタート

世界のメディア王の異名をとるるパート・マードック氏(82)率いるメディア・娯楽企業大手ニューズ・コーポレーションの2社分割案がこのほどニューヨークで開かれた臨時株主総会で圧倒的多数で承認された。ニューズ社は628日付けでテレビ事業を中心とした新会社「21st Century Fox21世紀フォックス)」と新聞・出版事業を傘下におく「ニューズ・コーポレーション」の2つの上場会社に分割されることになった。

 

21世紀フォックス社の傘下には米テレビ界の人気番組『アメリカン・アイドル』などを放送する地上波テレビ「Foxネットワーク」、人気ナンバーワンのニュース専門局「Foxニュース・チャンネル」、若者向け人気ケーブル局「FX」、映画会社「20世紀フォックス」など旧ニューズ社の稼ぎ頭が吸収される。



一方、規模が格段に小さくなる新ニューズ・コーポレーション傘下には、ウォールストリート・ジャーナル紙、ニューヨーク・ポスト紙に加え、出版会社「ハーパー・コリンズ」などが置かれるほか、オーストラリアのテレビ局などが組み入れられる。

マードック氏は株主の前で演説し、「社の分割と新しいニューズ社の誕生で、もう一度仕事をやり直すという、通常では得ることの出来ない特別な機会を与えていただいた」としたうえで、「分割によってめまぐるしく変わるメディア環境に即応できる体制が整うことになる」と述べた。


新生2社もマードック一族が約40%の議決権を保有し、マードック氏が両社の会長を兼務する予定だ。

旧ニューズ社については、株主から傘下の120社にも及ぶ新聞社がグループ全体の足かせになっているとの指摘が絶えず新聞部門の切り離しを求める声が絶えなかった。しかし、新聞媒体に固執するマードック氏が分割には抵抗する姿勢をとり続けていた。マードック氏は父親が創設した新聞社を引き継いだ経緯もあり、ことのほか新聞に愛着を感じていることで知られる。ところが、117月、傘下の英大衆紙電話盗聴問題をきっかけに一気に不満が爆発。「放送事業者にふさわしくない企業だ」などと英政府当局から批判を受けたうえ、社内からも「収益性の高いエンターテイメント部門を犠牲にしてはならない」との声があがりマードック氏が屈した形で今回の分割となった。


分割後のニューズ社は活字媒体を支持する出資者が出資しやすくなるメリットもあるという。

<テレビ朝日アメリカ 北清>