米インターネット動画配信サイト「Hulu(フールー)」の売却劇に幕が閉じられた。日本にも進出しているフールーは米国を代表するメディア企業、21世紀フォックス(旧ニューズ・コーポレーション)、ウォルト・ディズニー、コムキャスト(旧NBCユニバーサル)が共同出資する企業だが、その運営方法などをめぐってオーナー会社間でしばしば対立することが指摘されていた。そのため今年3月に売却計画を発表。5月に売却額20億㌦を目標に入札受付を開始、米衛星放送最大手ディレクTVや米通信大手AT&T、さらにはケーブルテレビ(CATV)大手タイムワーナー・ケーブルなどが応札していた。
しかし、オーナー会社側が、提供する番組の放送翌日配信を取りやめることや、番組によっては放送後30日間配信を禁止するなど厳しい条件を付けたことで応札した企業からは不満が噴出。提示額の最高は10億㌦にとどまった模様だ。結局、オーナー会社サイドは売却を断念、逆にフールー事業のさらなる拡大に向け3社が7億5000万㌦の増資をすることで合意した。
売却中止の背景には、応札額が目標額に達しなかったことに加え、最も買収に熱心だったとされるディレクTVを敵対的な企業になる可能性があると判断したこと。フールー配信の番組に挿入されるテレビCM型のビデオ広告売上が急速に伸びていることに勇気づけられたこと、などが挙げられている。
21世紀フォックスのCOO(最高執行責任者)チェイス・ケリー氏は声明の中で、「応札した各企業と有意義な交渉ができたが、フールー経営陣にさらなる成長を託すことにした」と売却中止の経緯を説明。ウォルト・ディズニーの最高経営責任者(CEO)、ボブ・アイガー氏は、「フールーは、消費者が使いやすい革新的なサイトとしての地位を確立したが、さらなる潜在力を最大限伸ばしていくことでオーナー会社間の意見が一致した」と述べた。
フールーは広告支援型(無料版)「フールー」と、より多くのコンテンツを提供している有料型「フールー・プラス」の2つのサービスを提供している。12年におけるフールー・プラス加入者は約400万人。同年全体の売上高は6億9000万㌦。今年5月のユニークビューワー数は2200万件を記録している。米調査会社SNLケーガンでは13年中にフールー・プラスの加入者数が500万人、売上高は9億3800万㌦に達すると見ている。