米国でテレビの直接受信世帯が拡大傾向にあることが指摘されている。米調査会社「GfK」がこのほど発表した調査結果によれば、ペイテレビと呼ばれるケーブルテレビ(CATV)や衛星放送、さらには電話会社が提供する再送信サービスに加入せず、屋内外アンテナをつかって放送局から送られてくる電波を直接受信してテレビを見ている世帯が今年中に全体の19.3%を占める2200万軒に達する見込みだ。10年時に比べ37.9%も増えることになる。
米国ではペイテレビの解約現象をコード・カッティングと呼んでいるが、ペイテレビ事業者の加入料値上げ攻勢に辟易した若者加入者によるコード・カッティングが目立っている。GfKによれば、コード・カッティングに踏み切った世帯の6割が加入料の値上げを理由に挙げた。また、インターネット上のテレビ番組配信が盛んになったこともコード・カッティングを促す一要素となっているようだ。
その他、09年に実施されたアナログ放送からデジタル放送への移行により、直接受信でも画質のいい番組の視聴が可能になったこともペイテレビ離れに拍車をかけているという意見もあるようだ。
ところで、直接受信世帯を人種別にみると最も多いのがヒスパニック系(スペイン語を母国語とするグループ)。同層のペイテレビ未加入者は25%に達している模様だ。ただ10年にはすでに同層の23%が直接受信世帯だったとされ、増加幅はそれほど多くない。増加幅が多いのが黒人層。10年時に12%だったものが13年には22%と、ほぼ倍増するという。
一方、直接受信世帯が減っているのがアジア系。10年には同層の30%が直接受信世帯だったが、13年には23%と大幅に減少する見込みだ。アジア系住民の間ではペイテレビ加入が増える特異な傾向を示している。
ところで、GfKの数字に疑問符を投げかける向きもいる。これまで米国の直接受信世帯は全体の10%ほどというのが定説で、あるメディア・サイトには、「GfKの調査方法に間違いがあったとしか思えない」(チャールストン大学ダグラス・ファーガソン教授)などといった批判が寄せられている。
ちなみに、米調査会社SNLケーガンによれば、ペイテレビ加入世帯は現在全体の85.1%。13年末には84%に、4年後には82%にまで減退すると予測している。ちなみに、ペイテレビ事業者のシェアは、CATVが55.7%、衛星放送34%、電話会社は10.3%。同社ではCATVのシェアが下降線をたどっていくと見ている。