米テレビ界を代表する長寿番組『ザ・シンプソンズ』(米地上波テレビFoxネットワーク放送)の再放送版がシンジケーション番組として2014年からケーブル局にデビューする見通しだ。米テレビ番組案内誌「TVガイド」が特ダネとして報じたもので、同番組再販権を握る「20th Television」に10億㌦規模の利益をもたらす可能性のある大規模な取引になるという。
同番組は、架空の町「スプリングフィールド」に住むシンプソン一家を通して米中産階級の文化や生活ぶりを描いたコメディー番組。社会風刺がテーマで、ファンの多くが成人で占められている。プライムタイム(午後8-11時)で放送される数少ないアニメ番組だが、同番組の会話の一部が流行語になるなど社会現象になったこともある。米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞や米放送界のピューリッツァー賞と呼ばれるピーボディ賞も獲得している。
1989年にデビューして以来530話以上が放映されており、米アニメ番組史上最長寿番組とされている。映画化されたこともある超人気番組で、93年以降Foxネットワーク系列以外のローカル局に再放送版がシンジケートされていた。これらローカル局との間にケーブル局への番組販売をしない約束があったが、今回、その制約が失効した模様。ケーブル局にとっては待ちに待った番組解禁となった。
米業界誌などによれば、買い手にはFoxネットワークの姉妹局で今年9月に開局予定の若者向けコメディー・チャンネFXXが有力視されている模様だが、最大限の利益を得るためにグループ会社外のケーブル局に売られるとの見方も出ている。候補には、米メディア企業大手タイムワーナー傘下の総合編成ケーブル局TBS(ターナー・ブロードキャスティング・システム)、若者に人気のケーブル局コメディー・セントラルやMTV(バイアコム傘下)、コメディー番組のてこ入れを始めたNBCユニバーサル系のケーブル局USAネットワークなどが上げられている。いずれも米ケーブル局を代表する大手で、獲得競争が過熱すれば番組の値段がつり上がる可能性も指摘されている。Foxサイドは番組販売価格を1話150万㌦に想定しているようだ。
シンプソンズはこれまでにも、Foxネットワークに長年にわたり安定した視聴率を提供したばかりか、DVDやビデオゲーム、さらにはTシャツや人形などキャラクター商品の売上など貴重な放送外収入をもたらしてきた。