米放送通信事業の規制や監督機関である連邦通信委員会(FCC)が外国企業による米テレビやラジオ局の所有規制を緩和する動きを見せている。特に経営難に陥りやすい女性やマイノリティー・グループ向けの小規模なテレビ局などに新たな資金が投入されやすい環境づくりを目指している模様だ。
米国ではテレビ放送事業者の間に大が小を飲む吸収合併劇が今年だけでも211件に上っており、メディア企業大手による寡占化に反対する団体「フリー・プレス」などから懸念の声が上がっている。連邦議会からも緩和を促す声が上がっていて、FCCにとって規制緩和に踏み切る環境が整っていると言えそうだ。
現在米国では外国企業による放送局への出資率は最大25%に制限されているが、新しいルールはケース・バイ・ケースでこの制限を取り除いていくというもの。完全撤廃されるわけではなく、国家安全保障を脅かす可能性のある外国企業の参与などは厳しく審査していくとしている。
同案を提案したFCC委員長代行のミニョン・クライバン氏(民主党)はステートメントの中で、「(新ルールにより)新たな出資者に門戸を開き資金を調達しやすくなるはずだ」と説明、放送局に対しFCCに外資枠拡大を積極的に申請するよう呼びかけている。
全米放送事業者協会(NAB)のゴードン・スミス会長はFCCの動きをうけ、「規制が緩和されれば、放送事業者がようやく通信業界と同じく外資を受け入れやすくなる。それにより、テレビ局やラジオ局の経営が強化され、デジタル・メディア(インターネット)に対抗し、強力な報道番組、エンターテイメント及びスポーツ番組を提供できるようになる」と、いち早く歓迎するステートメントを発表、FCCに対し新案の早期採択を呼びかけている。規制緩和の暁には、著しい人口増加傾向を見せているヒスパニック系住民(スペイン語を母国語とするグループ)向け放送局などが活性化するものと期待が寄せられている。
ちなみに、米国では通信業界のほか、ケーブルテレビ(CATV)事業者やケーブル局、さらにはインターネット関連企業などは25%の外資制限を受けていない。
同案は11月14日に予定されているFCC会合で図られることになっているが、採択される見通しだという。
ところで、連邦議会は10月29日、トム・ウィーラー氏(民主党)を新FCC委員長に承認。クライバン委員の代行職は解かれることになる。