ブロックバスター全店舗が閉鎖へ

「インターネットがビデオ・ストアを抹殺する」。ニューヨーク・タイムズ紙がちょっとセンセーショナルな見出しで米レンタル・ビデオ・チェーンの閉鎖を伝えた。そのレンタル・ビデオ・ストアとはかつて9000店舗以上の圧倒的存在感で全米を網羅した「ブロックバスター」。現在300店舗に激減した直営店は来年初頭にすべて姿を消すことになった。同社の親会社で衛星放送大手のディッシュ・ネットワークが11月上旬に発表した。

ブロックバスターは一般家庭にVHSビデオプレイヤーなどが普及した1985年に創業。週末を控えた金曜日夕刻などに仕事帰りのサラリーマンなどが、ブロックバスターに立ち寄って映画やテレビ番組のテープを借りて家で見ようとカウンターに並んだ光景がひとつの社会現象になったこともある。その後、VHSテープがすたれDVDが普及したが、ブロックバスターもDVDに切り替え危機を乗り切った。ただ、いまやストリーミング・ビデオ配信サービスの代名詞になっているNetflix(ネットフリックス)が郵便をつかった宅配DVDレンタルを展開するころになると急速に人気が低下。とうとう2011年に破産に追い込まれた。

ディッシュ・ネットワークが11年に32000万㌦で買収し再生を図ったが、ネットフリックスやアマゾンなどインターネット上の動画配信サービスの人気が急上昇。今回完全撤廃を余儀なくされた。ディッシュ・ネットワークの最高経営責任者(CEO)ジョセフ・クレイトン氏は発表に際し、「(撤退の)決定はやさしいものではなかった。しかし、ビデオ・エンターテイメント配信に対する消費者の要求は、明らかにデジタル(インターネット)配信に向けられている」と述べ、店舗を借りる必要もなく、かつ消費者にとっては居ながらにして好きなコンテンツが入手できるネット・ビジネスにブロックバスターが凌駕されてしまったことを認めている。

ただ、クレイトン氏は、「DVDレンタル店舗は閉鎖しても、ブロックバスターのブランド名は消滅しない。そのブランド力を利用してデジタル・サービスを展開していくつもりだ」と述べ、同社が立ち上げた映画やテレビ番組のインターネット配信ビジネス「Blockbuster@Home」を拡大していく考えを明らかにした。

300店舗の閉鎖により2800人の従業員が解雇されることになるが、同時にDVD郵送レンタル・サービス事業も閉鎖される。全米50か所にある加盟店はビジネスを継続する模様だ。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>