新聞・雑誌社がテレビ局に変身?!

米国の新聞や雑誌社の間でホームページに今日の出来事のハイライトやトピックスなどを動画で伝える動きが顕著になっている。各社、歯止めのかからない購読量や広告収入の減少に対応するためデジタル媒体への移行を推進しているが、中でも動画コンテンツは人気が高く、高額な広告料金を課すことができるのが魅力だ。映像をお家芸としてきたテレビ界にとっては無視できない動きとなりそうだ。

有力紙の一つ、ニューヨーク・タイムズ紙を例にとると、人気情報サイト「ハフィントン・ポスト」のビデオ部門の責任者レベッカ・ハワード氏を引き抜き、50人体制のビデオ制作部門を開設。今日の出来事を1分のビデオハイライト版にした『TimesMinute(タイムズ・ミニッツ)』(一日3回更新)をはじめ様々なニュースを動画で伝えている。ちなみに、タイムズ・ミニッツはマイクロソフト社が一社提供している。

 

また、11月のニューヨーク市長選に立候補した現市議会議長に密着取材したドキュメンタリー映像は内外から高い評価を受けている。同紙の動画は、10月だけで1200万件の閲覧数を記録、ユニークビューワー数も300万人と、過去1年間で100%増となった。

雑誌界でも同様な動きが出ている。米高級誌「ザ・ニューヨーカー」やファッション誌「ヴォーグ」など、数々の雑誌を出版するコンデナスト社は今年3月以来、地上波テレビ・ミニネットワークCWの編成担当社長を務めたことがあるドーン・オストロフ氏などをスカウト、75人体制で動画部門の運営を手掛けている。

そして、新聞社や雑誌社の動画部門拡充は大手だけに留まらない。カリフォルニア州サンディエゴのローカル紙「UT-サンディエゴ」では、同紙ウェブサイト上で24時間テレビ型ニュースを伝えるサイトを創設して数年が経つ。同紙を買収した元テレビ・ラジオ局経営者ダグ・マンチェスター氏は業界紙ブロードキャスティング&ケーブル誌とのインタビューの中で、積極的な動画配信について「変わらなければ生き残れない」と“紙”からの脱却の一環であることを説明している。

これら紙媒体が制作した番組は、自社ウェブ上配信に留まらず他社へ番組販売する動きも出ている。ニューヨーク・タイムズのビデオ・コンテンツはすでに人気動画配信サイトHulu(フールー)やYouTubeに配信されているが、今後はローカルテレビ局などにシンジケートされる可能性も出てきた。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>