米報道機関がモバイル人口に注目

米メディア企業大手NBCユニバーサル(NBCU)(コムキャスト社傘下)でグループ内の報道事業を統括するNBCUニューズ・グループはこのほど、短編動画ニュース配信を手掛ける新興のインターネット関連企業「NowThis News」と提携関係を結んだと発表した。NBCUNowThisの株式10%程度を取得、NowThisが制作した動画ニュースすべての素材をNBCの全番組に使用出来る権利を確保した。NowThisNBCが抱える膨大なニュース素材などへのアクセス権を得るという。

NowThisはスマホなどを使い、「Vine」、「Instagram」、「Snapchat」などのソーシャルメディアを利用する若者層をターゲットに、一日のニュースを動画のダイジェスト版で提供している。2012年にインターネット新聞である「ハフィントン・ポスト」の元会長だったケネス・レアー氏が創設。現在、ABCニュースやワシントン・ポスト紙など既存の有力メディア出身者など30人のスタッフで運営されている。一日に平均50項目の動画ニュースを制作公開しているが、いずれも30秒から1分以内の短編が特徴だ。扱う内容は、政治ネタをはじめ、ビジネス・ニュースやポップカルチャーなど幅広い範囲にわたっている。レアー氏によれば、将来的には6秒、10秒、15秒といった極端に短い映像(マイクロビデオ)でニュースを伝えることを目標にしている。

米国ではニュースをテレビ受像機の前に座って知る人口が減少。特に若者層の間でスマホなどを利用して入手する傾向が高まっているが、NBCユニバーサルの今回の動きは同視聴者層の取り込みを狙ったもの。NBCUニュース・グループのパット・フィリクラシェル会長は「若者の間でニュースを見る人口が増えているが、彼らに興味を持ってもらうためには同層が利用するプラットフォームに進出することが肝要だ」と説明している。また、同社の広告営業担当社長リンダ・ヤッカリーノ氏は今回の決定について、「新興プラットフォームにしっかりコミットしていくNBCの姿勢を反映したもの。広告主がさらに幅広い視聴者にアピールできる手助けにもなる」と語っている。

米メディア界ではニュースサイトを運営するヤフーやAOLに加えウォールストリート・ジャーナル紙などが大型投資をし動画ニュース配信サービスを展開する傾向が鮮明になっている。ちなみに、ある調査では22年までに「テレビ番組はテレビ(受像機)以外で見るようになる」と考える消費者が過半数を超えている。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>