第22回冬季五輪ソチ大会が7日、開幕した。冬季五輪としては史上最多となる87ヶ国・地域が参加する大会の模様は米国ではコムキャスト傘下のメディア大手NBCユニバーサル(NBCU)が地上波テレビNBCネットワーク、ケーブル局、インターネットを総動員して独占放送する。7日の開会式の模様は、NBCネットワークのみがプライムタイムで録画中継した。NBCが発表した速報によれば午後8時から3時間超にわたった特別番組には3170万人がチャンネルを合わせた。録画中継版としては94年のリレハンメル大会に次ぐ冬季五輪史上2番目の視聴者数となった。
さて、メディアの観点からソチ大会を見れば、最大の特徴はなんといっても競技の模様をパソコンやスマートフォンなどで視聴可能にするデジタル配信の拡充だろう。熱戦の模様は、地上波テレビNBCネットワークに加え傘下のケーブル局を駆使しブラウン管を通して530時間にわたり視聴者に届けられるが、今大会ではすべての競技がネット上で生中継される。ネット放送時間は合計1000時間にも上り、12年に開催された夏季五輪ロンドン大会時にNBCUが提供した700時間を優に超えるばかりか、06年に開催された冬季五輪トリノ大会と、10年のバンクーバー大会を合わせたものをも超える過去最大規模のものになる。
背景には「デジタル配信がかえってテレビ視聴を助長する」との判断がある。NBCUのリサーチ部門社長のアラン・ウォーツェル氏はこう語る。「ロンドン大会のデータを分析した結果、タブレット型情報端末やスマホなどを使った五輪ネット視聴者の視聴時間は1日あたり8時間29分と、テレビのみで視聴した人(4時間19分)を大幅に上回っている。そしてそのネット視聴がテレビ視聴を誘導することも実証された。」
ソチと米東海岸の間には9時間の時差があるためNBCUでは主要競技の模様は録画中継でプライムタイムで放送するが、「ネット上に開放してしまえば、テレビを見なくなる」との懸念は完全に払しょくされたとしている。
また、NBCUではデジタル配信がさらなる収益をもたらすことにも期待を寄せている。NBCUが国際五輪委員会(IOC)に支払った独占放送権料は7億7500万㌦。運営費1億㌦を加え8億7500万㌦のコストがかかる勘定だ。完売しているCM枠からあがる広告収入は約8-9億㌦と見込んでいるが、デジタル配信が放送外収入をもたらし、今大会は黒字経営になると見込んでいる。