2014年

3月

13日

ESPN、デジタル配信に難しいかじ取

米メディア・娯楽企業大手ウォルト・ディズニー傘下の放送事業部門には地上波テレビABCネットワークや家族向け専門局ディズニー・チャンネルなどがあるが、ひときわ存在感を放っているのがスポーツ専門局ESPNだ。同局が毎週月曜日に全国向けに放送するNFL(米プロフットボール・リーグ)主催の試合中継番組『マンデーナイト・フットボール』は常に視聴率番付上位にランクされているほか、大リーグの試合や人気大学スポーツなどの放送権も保有、向かうところ敵なしの勢いだ。グループ全体の営業利益の40%を占めるディズニー傘下の稼ぎ頭でもある。

そのESPN、スマホやタブレット型情報端末向けに番組をデジタル配信する際のアプリケーション「WatchESPN」を他社に先駆け開発、展開している。ESPNを送信するペイテレビ(CATV、衛星放送、電話会社)市場がほぼ飽和状態に達しているため、インターネットやワイヤレス通信などといった新しいプラットフォームへの進出の必要性を感じているためだ。ESPNの全米視聴可能世帯数は9840万世帯にも達しているが、11年から13年の間150万軒の加入世帯を失い、まだ微々たる数だが社内にはペイテレビ以外の番組配信への展開の必要性を唱える声が少なくないという。 ESPN視聴者の年齢の中央値が42歳なのに比べWatchESPNの視聴者は28歳なのも大きな魅了だ。

だが、行き過ぎたデジタル配信にはペイテレビ事業者から懸念が示されるのは必至で、難しいかじ取りを強いられつつある。ESPNにとってペイテレビから徴収する配信料は命綱。ケーブル局の中でも群を抜いて高額な配信料は1世帯当たり月額554㌣と言われている。配信料だけで総額54000万㌦にも上る収入だ。

そこで、ペイテレビの懸念を和らげるため、WatchESPNは特定のペイテレビ加入者のみがアクセスできる間接的な有料サービスの形式をとっている。加入者にペイテレビ加入の付加価値を見出してもらい、若者層で進んでいる解約傾向(コードカッティング)を食い止める役割を担っている。

一方、デジタル配信の全面展開には数々のハードルもある。NFLなどスポーツ・リーグが独自のデジタル配信サービス開設のために、ESPNなどの番組デジタル配信に制限を加え始めていること、ペイテレビの間でWatchESPN特別料金支払いを拒否する兆候が出始めていること、デジタル配信が行き過ぎればコードカッティングに拍車がかかる可能性があること、などだ。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>

American Media