米NBCU、五輪独占放送32年まで

国際オリンピック委員会(IOC)はこのほど、2022年から2032年における五輪6大会の米国内独占放映権を米メディア企業大手NBCユニバーサル(NBCU)が総額765000万㌦で獲得したと発表した。NBCUは別途、五輪普及のためのプロモーション費用などに1億㌦を払うことでも合意、総額は775000万㌦。

NBCUの親会社コムキャストによれば、今年2月に開催された冬季五輪ソチ大会の売上高はIOCに支払った放映権87500万㌦を大きく上回る11億㌦に達し、新契約締結を勇気づける要因の一つになった。CM飛ばし視聴されない生番組の代表格スポーツ・イベントは広告主がターゲットにしている番組でもある。

“オリンピック・ネットワーク”をブランド名にしているNBCU2000年のシドニー大会以降2020年の東京大会まですべての放送権を獲得する。新契約では現行通り、NBCUがテレビ放送のほか、インターネットや携帯電話向けのワイヤレス配信権などオールライツを取得する。NBCUのスティーブ・バーク最高経営責任者(CEO)は声明の中で、「五輪以外にすべての国民が親しみを感じるスポーツ・イベントはない。決定はNBCUにとって最も重要な日のひとつになるだろう」と、胸を張った。

新契約金は現行比16%増。一大会当たり平均約13億㌦の高額。「米消費者の視聴習慣が目まぐるしく変わるなど、既存メディアを取り巻く環境の行方は不透明。ギャンブルに近い契約だ」などと米報道機関の中には首をかしげる向きが少なくない。

その一方で、ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門局「ESPN」が米プロフットボール・リーグ(NFL)に対し17試合中継の代価として年間19億㌦を払っている例などを挙げ、「それほど法外ではない」などと指摘する意見もある。「五輪放送は20日間にわたりプライムタイム高視聴率を確約してくれる比類のないコンテンツ。NBCUの様々な番組を宣伝できる強力な舞台ともなる」などの擁護論も聞こえる。実際、今年のソチ大会の放送中にプロモートした番組の多くが人気を博していて、NBCU傘下の基幹事業である地上波テレビNBCネットワークは今シーズン、10年ぶりとなる視聴率王の座を奪還しそうな勢いだ。

ところで今回、ESPNをはじめ、ライバル・ネットワークのFoxCBSなども入札したが、NBCUの入札額には及ばなかった模様だ。ちなみに、22年冬季五輪から32年夏季五輪までの開催国はまだ未定。米国主催アピールはなかったとされている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>