テレビ視聴を誘導するTVE

米国で、「TV Everywhere(どこでもテレビ)」(以下、TVE)と呼ばれる番組のネット配信サービスがテレビ視聴を助長するという調査結果が公表され、関心を呼んでいる。若者に人気のケーブル局「コメディー・セントラル」、子供向け専門局「ニコロデオン」などを傘下に置く米メディア企業大手バイアコムがこのほど発表したもので、TVE利用者の64%が、「同サービスがきっかけとなりこれまで以上にテレビをよく見るようになった」と答えた。広告主がターゲットにしている若者視聴者の中でも1975年以降に生まれた“ミレニアム世代”では72%とさらに高い割合になっている。

また、TVE利用者の多くがTVEを提供するペイテレビ事業者に対する忠誠心が高いことも分かり、放送事業者ばかりかペイテレビ各社にとっても吉報となった。

TVEとは、多機能携帯電話(スマートフォン)やタブレット型多機能携帯端末などを使って、好きな時に好きな番組を好きな場所で視聴できる、ネット経由のオンデマンド・サービスだ。番組をリアルタイムで視聴できるストリーミング配信も提供している。

TVEは、ここ数年地上波テレビの再送信やケーブル局の配信を手掛けるペイテレビ(CATV、衛星放送、電話会社)から離反する動き(コードカッティング)が若者消費者を中心に顕著になってきていることへの対応策の一つとして始まったサービス。ペイテレビ加入者に限定してTVEサービスを提供、付加価値を感じてもらいコードカッティングを思いとどまってもらおうという間接的な有料サービスだ。ペイテレビからの再送信・配信料が重要な収入源になっている放送事業者が同サービスの展開に全面協力している。同調査では、TVE利用者の98%が「ペイテレビ加入の付加価値として感じている」と答えており、ペイテレビ側にとって勇気づけられる反応だ。

また同調査では、TVE利用者の31%が、「TVEで見た番組をもう一度見直している」と答えているほか、「(提供される番組数や種類が豊富なため)独立系のネット配信サービスよりもTVEのほうが便利」だとする利用者が三分の一にも上ったことも明らかになった。このほか、TVEの利用目的について、「番組を見逃したから」や、「屋外で番組を楽しめるから」などが挙げられたほか、「他の人がテレビを使っているため、自分の見たい番組を見るために利用する」などと、2台目のテレビ替わりに使われていることも分かった。

<テレビ朝日アメリカ 北清>